msn産経ニュースなどによると、最高裁判所は、裁判員制度広報映画「審理」(以下、「審理」)について、主演女優(以下、本件女優)に覚せい剤取締法違反容疑がかけられていることから、「審理」による広報活動(貸し出し、インターネット配信、配布、上映会等)が中止されているという。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090807/crm0908071805036-n1.htm
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20090807-OYT8T01152.htm
他方で、裁判員制度は、先ごろ第一号事件の判決宣告が行われたばかりで、まだまだ広報の必要がある。
そこで、裁判員制度広報という観点から、最高裁による「審理」を使用した広報活動中止決定について、考察してみたい。
2.「審理」による広報活動中止の原因とされる事件の概要および「審理」を使用した広報活動中止までの経緯
2009年8月3日
本件女優の夫が、渋谷署の警察官によって職務質問され、覚醒剤所持が発覚。覚せい剤取締法違反容疑で現行犯逮捕。本件女優も任意同行や尿検査を求められるが拒否。そのまま姿を消す。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090804/crm0908041833028-n1.htm
http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK200908060010.html
http://www.daily.co.jp/gossip/2009/08/08/0002209928.shtml
8月7日
覚せい剤取締法違反容疑で本件女優の逮捕状が(おそらく東京地方裁判所によって)発行される。
最高裁判所が「審理」による広報活動の中止を発表。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090807/crm0908071109012-n1.htm
3.「審理」による広報の状況
「審理」の貸し出し状況やインターネット配信でのアクセス数などの数字を発見することはできなかった。
過去の裁判員制度広報映画の貸し出し状況を調べることとする。
本年度の広報用映画の貸出件数は19件と少ないため,今後はもっと利用してもらえるための方策を検討したい。
富山地方裁判所委員会(第9回)議事概要
http://www.courts.go.jp/toyama/about/iinkai/pdf/tisai09.pdf
富山地方裁判所において、平成19年の時点(「審理」の公開前)で、広報映画の貸出件数が非常に少なかったことがわかった(「評議」「裁判員」等の貸出件数だと思われる)。
他の裁判所や最近の貸し出し状況は分からなかった。
しかし、貸し出し状況の地域差や、急激な増加は考えにくい。「審理」もさほど貸し出しが多くなかったと考えるのが自然だろうと推察される。
3.上映会参加者による「審理」に対する評価状況
「審理」による広報の効果はあるのだろうか。
そこで、「審理」を見た人がどのような評価をしているのか、上映会のアンケート結果を見る。
以下は、裁判所ウェブサイトで公開されている、釧路地方裁判所管内で行われた上映会のアンケート結果である。
知ろう!裁判員制度inえんがる (2008年10月10日)
http://www.courts.go.jp/kushiro/about/koho/pdf/08_10_10_kaisai_engal/enquete.pdf
《本日の上映会・説明会で裁判員制度のことを理解できましたか?》
ある程度理解できた 38人(71%)
よく理解できた 13人(25%)
無回答 2人(4%)
知ろう!裁判員制度inくしろ (2008年10月18日)
http://www.courts.go.jp/kushiro/about/koho/pdf/08_10_18_kaisai_kushiro/enquete.pdf
《映画「審理」の視聴により,裁判員裁判の「審理」や「評議」の具体的なイメージを持てましたか。》
だいたい持てた 58人(59%)
持てた 21人(21%)
なんとも言えない 15人(15%)
あまり持てなかった 4人(4%)
まったく持てなかった 1人(1%)
知ろう!裁判員制度inひろお (2008年11月12日)
http://www.courts.go.jp/kushiro/about/koho/pdf/08_11_12_kaisai_hiroo/enquete.pdf
《映画「審理」の視聴により,裁判員裁判の「審理」や「評議」の具体的なイメージを持てましたか。》
だいたい持てた 31人(57%)
持てた 14人(25%)
なんとも言えない 5人(9%)
あまり持てなかった 4人(7%)
まったく持てなかった 1人(2%)
釧路地裁管内で行われた「審理」上映会においては、約8割の参加者が「(裁判員制度のことを)理解できた」「ある程度理解できた」「(裁判員裁判の具体的なイメージが)だいたい持てた」「持てた」などと回答している。
「審理」には、視聴した人の約8割に裁判員制度の理解を増進してもらえる広報効果がある、と考えられる。
4.本件女優の再評価状況
本件女優は、歌手としても長く活動しており、たくさんの楽曲を残している。
覚せい剤取締法違反容疑での逮捕状発行および逮捕以降、日刊スポーツによると音楽配信サービス(itunesで6位など)でのランキングが上昇しているという。インターネット通信販売大手のamazon.co.jpにおけるCD販売ランキングでは8月10日現在で8位となっている。
他方で、CDは回収が進められており、音楽配信も停止が進められている。
ベストアルバムのひとつである《大好き〜My Moments Best~(初回限定盤)(DVD付)》は、amazon.co.jpのマーケットプレイスにおいて、19,000円以上ものプレミア価格がつけられている。
レコード会社がCDの回収やインターネット楽曲配信の停止を進めていることから、本件女優の音楽が聴きたくても聴けない、という状況となっている。
これらの現象は、本件女優の覚せい剤取締法違反容疑が連日報道されたことによる、本件女優に対する再評価の高まりと考えられる。
http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/music/ref=sv_m_3
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20090810-529266.html
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000UJJBSS/sr=8-1/qid=1249882456/ref=olp_product_details?ie=UTF8&me=&qid=1249882456&sr=8-1&seller=
5.結論
裁判員制度広報映画は、貸し出しは決して多くない(2)ものの、「審理」を視聴した人への広報効果は高い(3)ようだ。
「審理」に主演した本件女優に対する再評価は高まりつつあるが、CDは回収が進められており、本件女優に対する渇望を感じている人は少なくない(4)であろう。
「審理」による広報活動を再開すれば、本件女優に対する渇望やプレミア化などから、貸し出し依頼や上映会参加者、インターネット配信へのアクセス数などが、増加するものと考えられる。
今すぐに「審理」を使った裁判員制度広報活動を再開すれば、本件女優に対する再評価および渇望によって、これまで以上に「審理」の貸し出し件数やアクセス数が増加し、上映会で約8割の参加者に裁判員制度への理解を増進させた実績によって、「審理」を視聴した人々の多くに裁判員制度への理解を増進されることができると考えられる。
「審理」を使用した裁判員制度広報活動を今すぐ再開することによって、これまで以上に効率の良い広報効果が期待できると結論づけるものである。
【出典・参考文献】
msn産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/
デイリースポーツ http://www.daily.co.jp/
裁判所 http://www.courts.go.jp/
amazon.co.jp http://www.amazon.co.jp/
日刊スポーツ http://www.nikkansports.com/