[PR]
総合離婚情報「リコナビ」
なぜか人気の防犯アイテム「センサーライト」で侵入者を静かに撃退!

2008年07月08日

裁判員制度対象事件 最も多い強盗致傷はアタリかハズレか?

 被告人は20〜30代ぐらいの男性で、自動車で被害者に追突して転倒させ、さらにバッグからお金を奪った疑いで、強盗致傷の罪に問われています。被害者は大ケガを負ったといいます。

 強盗致傷の罪は、平成18年における裁判員制度対象事件のうち、最も多い罪名で、30%を占めています。
 今回は、皆様が裁判員に選ばれた場合、最も担当する確率の高い事件を扱って、楽に量刑を考える方法について探っていきます。


【注意事項】
 この記事は、私が裁判傍聴で必死こいて書き殴ったメモを元に、なんとか記憶を辿って書いたものです。もしかしたら、実際に裁判で起こったことと、全然違うかもしれません。
 また、私に法律の知識はありません。
 偏った思いこみや思想が文章に紛れ込んでいるかもしれません。極力避けるように努力します。ご了承下さい。
 この記事が事件の真実を言い当てることなどございません。
 無いとは思いますが、無断転載はご遠慮下さい。引用は法律を守ってご自由にどうぞ。
 リンクはご自由にどうぞ。ただし、画像等への直リンクはおやめ下さい。
 登場人物のイニシャルは本名と無関係です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《裁判員制度対象事件 最も多い強盗致傷はアタリかハズレか?》
【強盗致傷】『新件』
名古屋地方裁判所903号法廷
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★登場人物★☆
Hさん(20〜30代ぐらいの男性。大柄)
弁護人(60代ぐらいの男性)
検察1(30代ぐらいの女性)
検察2(男性。詳細忘れました)
裁判長(50代ぐらいの男性)
右陪席(40代ぐらいの男性)
左陪席(20代ぐらいの女性)



 みなさんは、ご自分が裁判員になったら、どんな事件を担当すると思いますか?
 ここでは確率だけで見ることにします。このグラフは平成18年に地方裁判所で受理された裁判員制度対象事件の内訳です。
罪名別 裁判員制度対象事件数(平成18年)

 厳密に言えば、事件数は、そもそも事件が起こったか否か、摘発されたか否か、法令の改正、そして何と言っても捜査機関の方針転換等によって、多少の変化は起こります。
 例えば、万引きの発覚直後に店員を殴った事件を厳しく取り締まるか(甘く見れば窃盗+傷害、厳しく見れば強盗致傷)、傷害罪の罰則を「無期または3年以上の懲役」と改正したら(現在は15年以下の懲役または50万円以下の罰金)、裁判員対象事件数は大きく変化します。

【裁判員制度対象事件数10位まで】
1.強盗致傷 30%
2.殺人 21%
3.現住建造物等放火 11%
4.強姦致死傷 8%
5.傷害致死 6%
6.強制わいせつ致死傷 5%
7.強盗強姦 5%
8.覚せい剤取締法違反 4%
9.強盗致死 2%
10.危険運転致死 2%

 見過ごされがちですが、裁判員制度対象事件(平成18年)のうち、30%が強盗致傷です。つまり、裁判員に選ばれたら、3割程度の確率で強盗致傷を担当することになります。

 これは、2008年7月5日時点での、プロ野球セントラルリーグの、横浜ベイスターズの勝率と同じです。今シーズン前半のベイスターズの強さが、裁判員になって強盗致傷を担当する確率とお考えいただいてよろしいかと思われます。

 えっ? 「たいして高い確率に思えない!!」ですって?
 そ、そんなことないですよ。ベイスターズは71試合中21勝しています。内川選手は現時点で首位打者です。防御率4.77さえ何とかなればチームを立て直すチャンスはあります。

 えっ? 「名古屋人だったらドラゴンズで例えろ!!」ですって?
 すみません。「名古屋」を名乗っているのに関東の球団の話をしてすみませんでした。

 同じ7月5日時点ですと、中村紀洋選手の打率が.293で、ほぼ3割と言って差し支えないと思います。ですから、中村紀洋選手がヒットを打つ確率をイメージしていただければ、裁判員になって強盗致傷を担当する確率がお分かりいただけるかと思います。

 えっ? 「それはどえりゃー高い確率だ!!」ですって?
 そうですねえ。プロ野球を例えに選んだ私がバカでした。申し訳ございません。

 ベイスターズはこのところ精彩を欠いています。一方の中村紀洋選手は、チャンスに強く、長打率が高い選手です。頼れる(怖い)バッターです。数字以上の存在感がある選手です。
 プロ野球の世界では、数字よりも、球団や選手のイメージが先行するようです。

 でもでも、私が言いたかったことは、何となくお分かりいただけたかと思います。
 裁判員対象事件のうち、強盗致傷が最も多いということは、意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「そんなに強盗事件って起きてるの?」
 疑問に思われるのは当然です。

 つぎのグラフは、殺人の罪もしくは強盗の罪で検挙された人員数と、ヨミダス文書館(読売新聞バックナンバー検索)にて「殺人」、「強盗」で検索したヒット数の、年次推移を比較したものです。
 吹き出しは、死刑確定した事件または死刑が争われている事件のうち、《読者が選んだ日本10大ニュース》(読売新聞)に選ばれた事件です(30位以内)。長方形から矢印がのびているのは、死刑が争われたわけではありませんが、有名な事件です。

殺人と強盗に関する新聞記事件数と検挙人員の比較

 1999年あたりに刑事事件報道の需要が高まったことは間違いなさそうです。しかし、細かく見ていくと、「強盗」と「殺人」では、少し違った事情がありそうです。

「強盗」は、2004年以降の検挙人員低下を機に、記事件数も低下しています。1999年以降の「強盗」を含む新聞記事件数急増があるものの、2001年以降はおおむね検挙人員との相関が見られます。

「殺人」の新聞記事件数は不思議な曲線を描いています。
 検挙人員は毎年1,300人程度でほぼ変化していません。毎年約1,300人が殺人や殺人未遂などの罪で検挙されていることになります。
「殺人」を含む新聞記事件数は、検挙人員が年間約1,300人と一定にもかかわらず、1999年から急増を始め、2001年以降は高い推移で安定しています。「殺人」を含む新聞記事は、検挙人員の4.6倍ほど、書かれていることになります。

 つまり、殺人事件は、実際の事件数よりもたくさん(約4.6倍?)報道されていると考えられます。

 1999年以降、「殺人」を含む新聞記事が、売れるようになったようです。

 ですから安心してください。「そんなに強盗事件って起きてるの?」と驚くのは当たり前なのです。強盗よりも殺人のほうが多いと誤解するような情報が流通しているのです。ご自分を責めないでください。

 前置きが長くなりすぎました。深刻な事件なので読みやすいマクラを書こうと思ったのです。

 それでは、裁判員になったら最も担当する確率が高い「強盗致傷」について、まずは法令を見てみましょう。
(強盗)
第二百三十六条  暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

(強盗致死傷)
第二百四十条  強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法(明治四十年四月二十四日法律第四十五号)
 強盗致傷の法定刑は、無期懲役 or 6年以上の懲役、です。

 少し気が楽になってきませんか?
 裁判員に選ばれたとしても、強盗致傷事件を担当すれば、「死刑か無期か?」で悩む必要はありません。

 そこで今回の裁判です。
 私は、検察官立証の途中から入廷しましたので、起訴状や被害者の供述等は聞いておりません。それでも、裁判員にとって重要である被告人質問をじっくり聞くことができましたので、皆様の参考になる可能性があると思っております。

 今回は、量刑の判断に使えそうな事情を考えながら、書いていきたいと思います。ただし、判決宣告を聴けませんでしたので、答え合わせはありません。

 私は、一応の基準として、改正刑法草案の量刑基準を参考とします。正しいかどうかは別として、何らかの基準があったほうが、楽になりますので。
 ああ、マニュアル人間…。
 私は、自分の頭を信用していないので、基本的に自分で考えません。考えるのはもっと賢い方にお任せします。
 ここで申し上げたいのは、「改正刑法草案が参考になる」ではなくて、「量刑基準を決めておけば裁判員の負担が減る」ということです。どこかから拝借してきてもかまいませんので、自分なりに量刑基準を決めておけば、どの事情を判断材料に使えるのかハッキリします。これなら楽に意見が決められるでしょう。
 改正刑法草案の量刑基準は次の通りです。
 刑の適用にあたっては、犯人の年齢、性格、経歴および環境、犯罪の動機、方法、結果および社会的影響、犯罪後における犯人の態度その他の事情を考慮し、犯罪の抑制および犯人の改善更生に役立つことを目的としなければならない。
 犯人の年齢は分かりません。被告人のHさんは、大柄な男性で、25〜35歳ぐらいに見えます。

【量刑の判断材料】
1.被告人は男性で年齢は25〜35歳ぐらい(年齢)

 私が傍聴席に座った時、検察官は被告人の供述調書を読み上げていました。恐ろしい犯行が明らかにされていました。

【検察官立証】
[乙号証]
(要旨の告知が続いている)……狙う女性としては、1人で歩いている女性で、カバンを持っており、油断している様子の人です。後ろから車を衝突させて転倒させました。自動車の速度は20〜30km/hぐらいでした。
 犯行に鉄の棒を使った理由は、素手よりもすぐに黙らせることができるから、です。
 被害者(女性)を見かけると、すぐに後をついて走行し、気付かれないようライトを消して、車を衝突させました。
 被害者がすぐに起きあがるとビックリして棒で殴ったのです。頭を2回ほど殴るともう抵抗してこないと思いました。その後も被害者がハッチバックに手を入れようとしたので拳で背中を殴りました。さらに足で蹴って引き離しました。

 女性に車を衝突させてカバンを奪おうと考えたのは8月下旬頃です。9月に入ってから犯行を始めました。
 自転車に乗っている女性に自分の車を衝突させてカバンを奪いました。

 私は、カネがあるだけ、パチンコや麻雀に使ってしまいます。
 女性からカバンを奪えば簡単にカネが手に入ると思いました。

乙7号証 別の事件の犯行状況について
 人気のない路地に、ライトを消して、10km/hぐらいで衝突しました。被害者の頭を鉄の棒で1回殴りました。女性は静かになりました。私は、確認することなくカバンをつかんで、車で逃走しました。サイフから現金だけを抜き取って捨てました。
 あとで犯行現場近くに戻ったのは、女性がどうなったか、警察を呼んだかと思って、見に行ったのです。
 この時に盗ったお金はコンビニで酒や弁当を買って全て使ってしまいました。
(検察官立証終了)


 被告人は、徒歩や自転車に乗った女性に、自分の乗っている自動車を衝突させて、カバンを奪っていたようです。被害者が抵抗すると棒や素手で殴っていたといいます。
 恐ろしい犯行です。どちらも、被害者に大ケガを負わせたと思いますし、命を奪われてもおかしくなかったでしょう。

【量刑の判断材料】
2.1人で歩いている女性、自転車に乗った女性に、自分の乗っている乗用車を衝突させた(方法)
3.被害者が抵抗すると金属棒で殴った(方法)
4.気付かれないようにライトを消して走行した(方法)
5.お金があるだけギャンブルに使ってしまいお金に困っていた(性格 動機)
6.お金を盗った(結果)


 続いて弁護人立証に移ります。
 弁護人は被告人質問のみを請求しました。もちろん採用されました。

【弁護人立証】
被告人質問


 裁判長は、Hさんの体調を確認した後、「立ったままで」と指示しました。

 まずは弁護人からの質問です。

弁護人:「まず、あなたの家族についてお訊きしますが、お父さんとお母さんですが、乙20号証で話した人は、あなたの実の母親ですか?」
Hさん:「違います」
弁護人:「いわゆる継母というか、お父さんの後妻ですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「育つ過程で実の母親でないことは知っていましたか?」
Hさん:「知ってました」
弁護人:「実のお母さんは、あなたが何歳の時に、いなくなったのですか?」
Hさん:「3歳ぐらいです」
弁護人:「1回だけ会ったことがあるそうですね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「離婚してしばらくのうちに会ったのですか?」
Hさん:「離婚して少ししてからだったと思います」
弁護人:「実のお母さんとは、その時会った以降は、会っていないのですか?」
Hさん:「会っていないです」
弁護人:「消息は?」
Hさん:「分からないです」
弁護人:「あなたにはきょうだいがいますが、きょうだいは後妻の子ですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「あなたは先妻の子、きょうだいは後妻の子、そういう境遇だったのですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「現在は、お父さんお母さんと、あなたとは、仲良くないのですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「家庭内がうまくいかなかったということですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「中学卒業後、漁船員の訓練所に行ったそうですね?」
Hさん:「行きました」
弁護人:「訓練所はどこにあるのですか?」
Hさん:「■■県です」
弁護人:「普通だったら、高校進学してから行くと思うのですが、あなたはどうして中卒で入ったのですか?」
Hさん:「私は、家でいつも両親とケンカばかりしていたので、早く家から出て、自立したいと思いました」
弁護人:「とくに高校進学できない学力ではなかったということですか?」
Hさん:「良くも悪くもなかったと思います」
弁護人:「それで漁師として働いたのですね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「何年ぐらい働きましたか?」
Hさん:「4回航海に出て3年半ほど働きました」
弁護人:「どこで働いたのですか?」
Hさん:「■■の船で働きました」
弁護人:「遠洋のほうですか?」
Hさん:「遠洋でした」
弁護人:「遠洋漁業というと船に長く乗っていることになるんじゃないですか?」
Hさん:「最初は11ヶ月でした」
弁護人:「何の漁をしていたのですか?」
Hさん:「マグロのはえなわ漁です」
弁護人:「仕事についてどのように思っていましたか?」
Hさん:「私としては、大変だけど、やれば面白いですし、働きやすかったです」
弁護人:「どうして辞めたのですか?」
Hさん:「当時、友達とかと遊びたいと思ったからです」
弁護人:「辞めたのは20歳の時ですね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「また愛知に戻ってきましたね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「職を何回か変えた後、一度結婚して、またすぐ離婚していますね?」
Hさん:「すぐではなくて約3年ほど続きました」
弁護人:「ま、離婚されて、犯行時は独身だったということですね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「付き合っている女性はいましたか?」
Hさん:「いました」
弁護人:「お父さんやお母さんとかね、家族との交流はありませんでしたか?」
Hさん:「マグロ漁から帰ってから1ヶ月ぐらい日本にいたので、少ししかいないことと、懐かしいことあって、関係は良かったです。漁師を辞めて、日本で働くようになってからは、また悪くなりました」
弁護人:「お父さんは病気だそうですね?」
Hさん:「父は、むかし事故で、内臓破裂を起こして、手術して、色んな病気になりました」
弁護人:「現在はどんな病気なのですか?」
Hさん:「分からないけどガンだと聞きました」
弁護人:「私のほうではガンの末期だと聞いているのですが?」
Hさん:「ガンとは聞きました」
弁護人:「今回、強盗致傷という重い犯罪なのですが、どうしてそんなことをしたのですか?」
Hさん:「はじめは、仕事とか、プライベートとかでイライラがたまって、逃げ出したいと思って、ヒドイことしました」
弁護人:「『逃げ出したい』というのは具体的に言うとどんなことでしたか?」
Hさん:「何か普段の自分ではやらないようなこととかやって」
弁護人:「うさ晴らし?」
Hさん:「そうです」
弁護人:「刑務所に逃げたいわけではないよね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「仕事ではどんなことがあったのですか?」
Hさん:「トラックの運転手をしていましたが、まわりの人から信頼されてたのですが、会社のほうからは信頼されてないのか、仕事を任せてもらえなくてイライラしました」
弁護人:「プライベートでは、家族、お父さんお母さんのことに加えて、何かイライラするようなことありましたか?」
Hさん:「私が借金あったので、彼女とのこれからのこととか、色んなことあって、考えると…」
弁護人:「交際していた女性とうまくいかなくなったのですか?」
Hさん:「関係は良かったけど、借金あって、これから先が…」
弁護人:「結婚とか考えると不安があったという?」
Hさん:「はい」
弁護人:「それで『うさ晴らしに』と事件を起こしたのですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「1回目の事件はどのように行いましたか?」
Hさん:「自転車に乗った被害女性を後ろから車でぶつけました」
弁護人:「被害女性は倒れましたか?」
Hさん:「倒れました」
弁護人:「被害女性はケガをされたんじゃないですか?」
Hさん:「私は、『本当にやってしまった』と思って…。女性はこぼれた私物を拾っていました」
弁護人:「あなたはどうしたのですか?」
Hさん:「『大丈夫ですか?』と訊いたら、『大丈夫だから早くどっか行ってください』と言われたので、立ち去りました」
弁護人:「お金は盗らなかったのですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「盗ろうと思い立ったのはいつですか?」
Hさん:「2回目の時です。1回目の当てた状況が浮かんで『ひょっとしたらカバンとれるかも』と思いました」
弁護人:「そのとき鉄棒は?」
Hさん:「やる………やる」(不明。メモ間違いかもしれません)
弁護人:「準備していたのですか?」
Hさん:「もともと車に棒を乗せてたので手元に引き寄せました」
弁護人:「引き寄せただけですか?」
Hさん:「使いました」
弁護人:「2回目の時にそうだったということですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「そう…、使ったんだ………。1件目と2件目は不起訴なんですが…。多少、うさ晴らしで始めても、強盗は重い罪です。車で致命傷を与えるのはもちろんですが、金属棒でも致命傷を与えかねませんね。変な言い方ですが、多少手加減というか、相手が致命傷を負わない配慮はしたのですか?」
Hさん:「私としては、スピードを抑えて、力の加減をして叩きました」
弁護人:「何月何日にどの人をしようと計画していたわけではないね?」
Hさん:「はい」
弁護人:「思い立ったけどやらなかったことはありましたか?」
Hさん:「眠れなくてよく車で走ったけど、思った時はやりました」
弁護人:「あなたがやったことは重大な犯罪だけど、今は被害者にどう思っていますか?」
Hさん:「絶対許されないことをしてしまったと思います」
弁護人:「自分がやったことをどう思いますか?」
Hさん:「許されないことだと思います。被害者に与えた衝撃や恐怖を考えると、自分はヒドイ人間だと思います」
弁護人:「あなたは10月のアタマに逮捕されたのかな?」
Hさん:「9月27日です」
弁護人:「5ヶ月ちょっと勾留されてますね。あなたは留置場だけど、中で反省していますか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「具体的にどのように反省しているのですか?」
Hさん:「事件について、何でやったのかとか、何でヒドイことやったのか、被害者の立場だとか、『自分の知っている人が同じことされたら』と思ったら絶対許されないと思いました」
弁護人:「被害弁償を全くしていませんね。無一文なのですか?」
Hさん:「はい」
弁護人:「お父さんお母さんは、とくにお父さんはガンで、とても余裕がないですね。あなた自身としては被害弁償についてどう考えていますか?」
Hさん:「私としては、もし被害者の方が受け取っていただけるなら、罪を償った後でマグロ船に乗って働いたお金で、弁償させてほしいです」
弁護人:「あなたとしては刑務所を出所した後について、漁師としてマジメに働いていきたいと、こういうことですか?」
Hさん:「はい……そうです」


 弁護人は、被告人Hさんが家族とうまくいっていなかったこと、家を出て遠洋漁業に従事したこと、衝突するスピードと殴る力の加減をしていたことをなど、有利な事情を聞き出しました。
 印象的だったのは、不起訴だった2回目の犯行(1〜2回目まではお金を盗っていない)で金属棒を使っていたと聞いた時、弁護人がとても残念そうにしていたことです。何を感じていたのでしょうか…。


【量刑の判断材料】
7.1人だけ前妻の子で家族と折り合いが悪かった(経歴および環境)
8.家族と離れたくて遠洋漁業に従事した(経歴および環境)
9.父親はガンを患っている(経歴および環境)
10.イライラして犯行に至った(動機)
11.交際相手と経済的な理由から結婚できそうになかった(経歴および環境 動機)
12.会社から信頼されなくてイライラした(性格 動機 経歴および環境)
13.借金があった(性格 経歴および環境)
14.不起訴となった2回目の犯行でも金属棒で殴った(性格)
15.乗用車のスピードや殴る力を加減していた(方法)
16.留置場で反省している(犯行後における犯人の態度)
17.無一文である(経歴および環境 犯行後における犯人の態度)
18.社会復帰してから働いて被害弁償をしたい(犯行後における犯人の態度)


 次は検察官からの質問です。まずは若い女性の検察官からです。

検察1:「あなたはね、4回も同じ犯行をしたということですか?」
Hさん:「はい」
検察1:「1回目は『イライラして』という動機でしたね?」
Hさん:「はい」
検察1:「女の人に車をぶつけてみてどんな気持ちがしましたか?」
Hさん:「少し前は『スッキリするのか』と思って、実際当てたら、『本当にやってしまった』と思いました」
検察1:「多少なりともスッキリできたんですか?」
Hさん:「スッキリよりも『本当にやってしまった』と思いました」
検察1:「『本当にやってしまった』とはどういうことですか?」
Hさん:「許されないことなのにやってしまった自分に驚きました」
検察1:「その気持ちは続きましたか?」
Hさん:「しばらく続きました」
検察1:「その気持ちが続いた後はどう思いましたか?」
Hさん:「捕まるかもしれないと思いました」
検察1:「『捕まるかもしれない』と思ったのに、何で2回目の事件を起こしたのですか?」
Hさん:「1回目と同じでイライラして」
検察1:「3〜4回目の犯行も同じですか?」
Hさん:「3〜4回目はカバン盗れること知ってやりました」
検察1:「車をぶつけたり、殴ったりする時、手加減したといいましたね?」
Hさん:「はい」
検察1:「ぶつける時にドキドキしてて、カバンを奪う時にもドキドキしてて、さらに被害者が立ち上がって取り戻しに来たのだから、ビックリしませんでしたか?」
Hさん:「ビックリしました」
検察1:「そんな中で手加減する余裕あったんですか?」
Hさん:「車は仕事で使ってますので感覚的にしました」
検察1:「鉄棒の加減したと言うのですか?」
Hさん:「硬い物なので自分なりに加減しました」
検察1:「その後も殴ってますよね?」
Hさん:「その後は鉄の棒でなく素手でしました」
検察1:「ところで、あなた勾留中に太ったように見えますが、原因分かりますか?」
Hさん:「仕事で汗をかいていましたから」
検察1:「お菓子食べていませんでした?」
Hさん:「食べました」
検察1:「誰が差し入れてくれたんですか?」
Hさん:「父です」
検察1:「いくらですか?」
Hさん:「5万円です」
検察1:「あなたから手紙か何かでお願いしたんですか?」
Hさん:「口頭で言いました」
検察1:「面会に来てくれたんですか?」
Hさん:「はい」
検察1:「何回ですか?」
Hさん:「4回です」
検察1:「あなたは父親に面会でお金の差し入れをお願いしたんですか?」
Hさん:「はい」
検察1:「なぜ、留置場で菓子を買うお金をお願いするのに、何で被害弁償しないんですか?」
Hさん:「父から『仕事してないから被害弁償する余裕ない』と言われました」
検察1:「自分でね、その5万円を被害弁償にあてようと、気付かなかったんですか?」
Hさん:「自分では気付きませんでした」
検察1:「被害者に、謝罪したいと言ってましたが、何かしたんですか?」
Hさん:「何もしてません」
検察1:「5万円あれば、便せんと切手を買って手紙を出せるし、一部を被害弁償にあてることだってできる。なぜしなかったんですか?」
Hさん:「ヒドイことしたと思ってたけど行動までしませんでした」
検察1:「なぜ行動しなかったのかと訊いてるんです! 普通ね、何かを伝える時は、行動を起こすでしょ。弁護人もついてるのに相談しなかったんですか?」
Hさん:「弁護人には相談しませんでした。刑事さんには被害状況を聞きました」
検察1:「刑事さんからどういう状況だと聞いたんですか?」
Hさん:「頭蓋骨骨折、くも膜下出血の大ケガで、身内の人がまいっていると聞きました」
検察1:「聞いて『悪いことしたな』と思いませんか?」
Hさん:「思いました」
検察1:「なぜそれを伝えようとしないのですか?」
Hさん:「私の気持ちが足りなかったと思います」
検察1:「『気持ちが足りなかった』ってどういうこと? あなたはたいして考えてないんじゃないですか?」
Hさん:「自分では考えなかったです」
検察1:「『出所後はマグロ漁師になる』と言ってますが…、あなたの調書見るとね、『お金をあるだけ使う生活はマグロ漁師時代に身に付いた』と言ってますが、またそこに戻るのですか?」
Hさん:「船に乗っていればお金は使わないし、陸には1ヶ月しかいないから、お金は使わないです」
検察1:「アテはあるんですか?」
Hさん:「問屋さんに電話したら紹介してもらえます」
検察1:「日本にいないあいだ被害者にどうやって送金するのですか?」
Hさん:「家族に送金する形があります」
検察1:「でも借金ありますよね?」
Hさん:「被害弁償を先にしたいです」


 非常に厳しい質問となりました。Hさんが謝罪の意志を行動で示していないことを指摘しました。深読みすると「被告人は反省していない」と主張する意図が感じられます。

【量刑の判断材料】
19.留置場では父親から5万円の差し入れてもらってお菓子を買った(犯行後における犯人の態度)
20.被害者はくも膜下出血や骨折の大ケガ(結果)
21.謝罪の手紙を出していない(犯行後における犯人の態度)


 もう一人の検察官からの質問です。

検察2:「2件目の事件でも被害者を殴ったそうですが、どこを殴ったのですか?」
Hさん:「立ち上がろうとした時に殴ったので左側のどこかに当たったと思います」
検察2:「左側のどのあたりか分かりますか?」
Hさん:「肩の辺りだと思います」
検察2:「全部で3人の女性を殴ったということですね?」
Hさん:「そうです」
検察2:「あなたが使った金属棒はかなり重いですよね?」
Hさん:「はい」
検察2:「逃げた後で心配になりませんでしたか?」
Hさん:「なりました」
検察2:「どんな風に心配になったんですか?」
Hさん:「事件のことが心配で、被害者の人がどうなったかと」
検察2:「どうなってると思いましたか?」
Hさん:「大変なことになってるのではないかと」
検察2:「『死んでしまうのではないか』と当時思いませんでしたか?」
Hさん:「そこまで考えてなかったです」
検察2:「逃げた後に『大変なことになってるのではないか』と心配しなかったのですか?」
Hさん:「気になって現場に戻りました」
検察2:「何が気になったんですか?」
Hさん:「被害者の人どうなったんだろうと」
検察2:「いつ思ったんですか?」
Hさん:「逃げてグルグル回っている時に思いました」
検察2:「そこまで心配していたのに、どうしてくり返すことができたんですか?」
Hさん:「イライラとかもあったけど、やっぱりお金が簡単に手に入ると思ったから」
検察2:「最初の自転車にぶつけてからタガが外れるとかあったんですか?」
Hさん:「『本当にやっちゃった』と思って、その後は『捕まるかもしれない』と不安あったけど、仕事のイライラとか、自分の都合でやってしまいました」
検察2:「どんどんエスカレートしてますけど、普通は悪いと思ったらやめますよね。何でやめられなかったんですか?」
Hさん:「今思うと、自分はちょっとおかしいって言うか、ちゃんとした考えができなかったと思います」
検察2:「あなたは暴走族にいたことがあるそうですが、抗争とかしてたんですか?」
Hさん:「ないです」
検察2:「鉄棒で叩く経験はありましたか?」
Hさん:「ケンカとか、単車乗って走ったりとか、なかったです」


 こちらの検察官は犯行時や犯行後の心理状態を中心に質問しました。Hさんは犯行時の迷いや心配を語りました。

 ちょっと心配になったのは「今思うと、自分はちょっとおかしいって言うか、ちゃんとした考えができなかったと思います」と言ったことです。追い詰められると何でもやってしまう性分なのでしょうか。とても心配でなりません。自分で気付いて行動を抑制できればいいのですが…。
 金属棒で見ず知らずの女性を殴るというのは珍しいことです。少なくとも私はやったことがありません。今まで傍聴してきた裁判でも聞いた覚えがありません。
 自動車で見ず知らずの女性に追突するという事件は自動車事故でよくありますが、わざと追突したというのは初耳です(顔見知りなら稀にあります)。


【量刑の判断材料】
22.簡単にお金が手に入ると思ったからくり返した(動機)
23.犯行当時は「ちゃんとした考えができなかった」(性格)
24.暴走族にいたことがある(経歴 性格)


 再び弁護人の出番です。検察官から謝罪していないことを指摘されて、再び質問します。

弁護人:「被害弁償はどれぐらいしようと思っていますか?」
Hさん:「まず治療費を払いたいです」
弁護人:「そう抽象的じゃなくて、何百万とか何十万とか、いくらぐらいと思ってますか?」
Hさん:「自分が思ってるのは……………………………………(長い沈黙)」
弁護人:「大ざっぱでいいですよ」
Hさん:「300万円……。もしくは500万円…」
弁護人:「先ほど検察官から指摘あった5万円ね、被害弁償するには少額だから、あなたとしては『とても受け取ってもらえない』と考えてたわけだね?」
Hさん:「とても足りないと思いま…」
弁護人:「(大きな声でさえぎって)はい!!! 終わります!!」


 弁護人は、お菓子を食べていたのは反省していないからではない、5万円などというはした金や手紙だけ送るのは失礼だと思ったから、という主張のようです。


【量刑の判断材料】
25.父親からの差し入れでお菓子を買ったのは、5万円ではとても足りないと思ったから(犯行後における犯人の態度)


 この日の手続はこれで終わりました。これ以降の公判を追うことはできませんでした。
 これまでの内容から、裁判員になったことを想定して、量刑について考察してみます。


 量刑の判断材料をパソコンソフトで整理します。使用するソフトは以前にもお世話になった「IdeaFragment2」です。
 ああ、マニュアル人間…。

「IdeaFragment2」(作者: ねこみみ / 須藤 幸一 氏)
動作環境 (Windows 98 / Me / NT / 2000 / XP / 2003 / Vista)
http://www.forest.impress.co.jp/lib/offc/document/ideaprocsr/ideafragment.html

 整理した結果を見てみましょう。
 赤いカードは被告人に不利な事情です。
 緑のカードは被告人に有利な事情です。
 白いカードはどちらでもないと思われる事情です。
 赤い両矢印で結ばれたカードは相反する事情です。量刑を考える上で争点となる部分と考えていいでしょう。
量刑判断材料の整理

 経歴および環境には有利な事情がたくさんあります。不遇な生い立ちには同情するしかありません。

 性格を見ると浪費癖が目立ちます。マジメに働いていたのに、給料はギャンブルで使い切って、借金までしていました。再犯の恐れを感じてしまいます。また、犯行当時は一時的に規範意識が著しく減退していた旨を述べており、再び窮地に陥った時のことを想像すると、こちらも再犯の恐れを感じます。

 動機に酌量の余地がないことは明らかです。強いて挙げればお金がなかったという事情はあるものの、もともとギャンブルで使い切ってしまったことが原因であり、自業自得というしかありません。

 犯行の方法はひどいものです。自動車と金属棒によって被害者の生命を危険にさらしました。失敗しないようライトを消して走行しています。粗暴さと巧妙さを兼ね備えた犯行です。

 結果は重大です。被害者は大ケガを負った上に所持金を全部盗られてしまいました。ライトを消した走行は交通に重大な危険を及ぼしました。

 ここで相反する事情があります。被告人が乗用車のスピードや殴る力を加減していたにもかかわらず、被害者は、頭蓋骨骨折、くも膜下出血などの、大ケガを負ったことです。
 私は、被害者が実際に負ったケガを重視して、力を加減していたという被告人の主張は大きく評価できないと思います。

 犯行後における犯人の態度には相反する事情がたくさんあります。
 Hさんは、社会復帰したら遠洋漁業で働いて、「300万円……。もしくは500万円…」の被害弁償をすると述べました。ところが、今の時点では、5万円の差し入れを受けながら、謝罪の手紙すら出していません。
 もちろん、全く反省していないわけではなく、「被害者の立場だとか、『自分の知っている人が同じことされたら』と思ったら絶対許されないと思いました」と、具体的に反省の弁を述べています。

 私は、やはり実際の結果や行動で判断したいです。

被害者=重傷、所持金を失った
Hさん=謝罪していない、被害弁償は社会復帰後、反省の弁を述べた

 今のところHさんは被害者に一切謝っていません。弁護人に謝罪の相談をしたことすらないそうです。これは重く受け止めざるを得ません。
 社会復帰後の社会弁償は、300〜500万円という数字が出ましたが、もう少し具体的な支払い計画(月々いくら振り込む等)がなければ、信用できません。遠洋漁業の給料を思い出せば計画を立てることは可能です。具体的な計画を考えていないのですから、行き当たりばったりで、本当に支払われるのかどうかは、Hさんの社会復帰後の収入と生活によって、大きく左右される可能性が高そうです。
「支払う意志」はあるが、具体的な見込みはない状態です。
 実は被害弁償する意思はなくて、ウソを言っている可能性はあります。しかし、私は、被告人質問に出てきた話だけでは、ウソを言っていると断定できる材料はないと考えました。

 私はこのように結論づけました。
 犯行後における犯人の態度は、

 反省や被害弁償の気持ちはあるが、謝罪や被害弁償の見込みは一切ない

だと思います。
 まとめてみます。

【不利な事情】
・浪費癖がある
・一時的に規範意識が著しく減退することがある
・動機はイライラしていたから
・動機は簡単にお金が手に入ると思ったから
・自動車で歩行者や自転車に衝突した危険な犯行であった
・ライトを消して走行するなど巧妙な犯行であった
・被害者は大ケガを負った
・被害者は所持金を盗られた
・交通に重大な危険を及ぼした
・被害者に一切謝罪していない
・被害弁償の目処が立っていない

【有利な事情】
・生い立ちが不遇であった
・反省している
・被害弁償の意志がある


 不利な事情ばかりが目立ちます。有利な事情においても、「反省している」と「被害弁償の意志がある」は、具体的な行動や目処が立っておらず、あまり大きく評価できないものです。重要なのは、心よりも行動であり、なによりもお金です。

 私が考えた結論としては、結果の重大さを考えると甘い刑を選択することはできませんし、減軽する材料は不遇な生い立ちだけ、ということになります。

 懲役何年か? という話は、よく分かりません。素人には難しい問題です。
 とりあえず、強盗致傷の法定刑が「無期または6年以上の懲役」ですから、6年以上の刑を選択することは間違いありません。

 では、懲役6年以上の刑がふさわしいとして、例えば懲役7年と8年の違いは、どこにあるのでしょうか?

 じつは大きな違いがあります。
 懲役(禁錮)8年以上無期までの受刑者は、旭川刑務所などの、L級刑務所に送られるのです。Lはロング(Long)のLです。そこでは、刑期の長い受刑者や、更生が困難とされている受刑者などが、大勢暮らしています。
 8年未満であれば、A級(犯罪傾向の進んでいない者)もしくはB級(犯罪傾向の進んでる者)などになります。とくに初犯などで犯罪傾向の進んでいない人の場合、懲役7年でA級に送られるか、懲役8年でL級に送られるかで、その後の人生に大きな影響を与えることになるでしょう。
 刑務所の中でおっかない人から悪いことを教わって、出所時には次の犯罪計画がバッチリ、なんてことでは困ります。もちろん、短い刑にして、懲りないようでは困ります。彼が犯罪傾向の進んでいない人に非行のイロハを教えても困ります。
 甘い刑にも厳罰にもリスクがつきまといます。難しいですね。

 そこで、本件にあてはめてみますと、私としては「結果の重大さを考えると甘い刑を選択することはできませんし、減軽する材料は不遇な生い立ちだけ」だと思いますので、8年以上の刑を選択するのが相応しいと考えます。
 あとは他の裁判員の意見や量刑相場を参考にすれば適切な刑が出てくると思います。

 ただし、あからさまに刑務所の話をすると、「証拠に基づいてない」とお叱りを受けるかもしれません。あくまでも参考と考えてください。もし、誰かからツッコミを喰らったら、「一般市民の感覚ですので」とごまかしてください。

 私が考えました懲役8年以上という量刑は、これが正しいなどと言うつもりはなくて、むしろ疑ってかかってください。
 参考にしていただきたいのは、私が量刑を考えるために使った手法です。裁判員にとって負担が少なく、被告人や社会にとっても適切な選択となるよう、考慮したつもりです。
 私は、改正刑法草案を参考にして、パソコンソフトで整理して、送られる刑務所を考慮して、量刑を考えました。私は他人の知恵を借りることしかできません。
 もちろん、賢い方は、ご自分で量刑基準を考えることができると思います。ぜひ頑張ってください。


 私は、強盗致傷事件に関しては、大きな被害を出す事件ではありますが、裁判員の負担は比較的軽いだろうと思いました。
 動機はお金目当てで、方法は荒っぽく、被害者にケガをさせています。厳しい刑を選択することに迷いが生じにくいと考えられます。
 それでいて、法定刑が「無期または6年以上の懲役」ですから、「死刑か? 無期か?」で悩む必要はありません。

 裁判員にとってのやっかいごとがあるとすると否認事件でしょう。否認事件では、犯罪事実があったのかなかったのか、判断しなければなりません。

 強盗致傷における否認事件の確率はハッキリ分かりません。
 そこで、《司法統計年報 平成18年度》(最高裁判所)より、地裁で行われた強盗致死傷事件人員数と、事実誤認を理由に被告人側が控訴した強盗致死傷事件人員数を、比較してみます。

通常第一審終局人員 1014人
控訴事件の終局人員(被告人側が事実誤認を理由に控訴したもの) 189人

 百分率は18.6%となります。

 強盗致死の法定刑は「死刑または無期懲役」ですから、死刑を回避するため、被告人側による控訴の確率は高いと推察されます。強盗致死のバイアスによって確率が少し高くなっていると考えられます。
 したがって、強盗致傷の否認事件率は、18.6%より少し低い程度だと考えられます。
 18.6%には、「私はやってない」と言う全面否認の被告人もいるとは思いますが、多くは「2件目は私の仕業ではない」「盗んだ金額が違う」などの一部否認も含まれています。


 今回は、裁判員対象事件の中で最も多い、強盗致傷事件を扱ってみました。少なくともこの事件では、裁判員の負担はさほど大きくなさそうでした。
 唯一の心配は、否認事件に当たってしまうことですが、その確率は18.6%以下です。

 私としては、裁判員に選任された場合、強盗致傷事件を担当するのであれば、さほど大きな負担にはならないため、引き受けることで負うリスクは少ないと思いました。
 裁判員として選任されれば向こう5年間は辞退の申し立てができます。

《一度裁判員に選ばれても,再び選ばれることがあるのですか》裁判員制度
http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_14.html

 せっかくですから、負担の少ない事件で、5年間の辞退権を獲得したいところです。

◎今回分かったこと
・裁判員になって担当する確率が最も高い罪名は「強盗致傷」です。
・強盗事件の報道は殺人事件の陰に隠れています。殺人事件の記事のほうが4.6倍ほど売れるのです。
・裁判員に選ばれたら量刑基準を自分なりに決めておくと楽になります。
・量刑基準を決められない人はどこかから拝借してきましょう。
・謝罪で重要なのは、心よりも行動であり、なによりもお金です。
・懲役8年以上の受刑者はL級刑務所に送られます。
・L級刑務所には、刑期の長い受刑者や更生が困難な受刑者が、服役していらっしゃいます。
・L級かA級かで人生が大きく変わるかもしれません。
・強盗致傷は「死刑か? 無期か?」で悩む必要はありません。
・強盗致傷の否認事件は18.6%以下だと推察されます。
・強盗致傷は裁判員にとってアタリ…? 信じるかどうかはアナタ次第です。


【参考文献】
《ヨミダス文書館》読売新聞
《平成18年版 犯罪白書》法務省法務総合研究所
《平成17年版 犯罪白書》法務省法務総合研究所
《平成9年版 犯罪白書》法務省法務総合研究所
《平成18年の犯罪》警察庁
《平成17年の犯罪》警察庁
《平成16年の犯罪》警察庁
《刑法への招待 ―総論―》斎藤 静敬・覺正 豊和・創成社新書
《元刑務官が明かす刑務所のすべて―衣・食・住から塀の中の犯罪まで実録・獄中生活マニュアル》坂本敏夫・日本文芸社
《地方裁判所別に見た対象事件数(平成15から18年まで)》
http://www.saibanin.courts.go.jp/shiryo/pdf/04.pdf
《裁判員制度》
http://www.saibanin.courts.go.jp/
《Yahoo!スポーツ》
http://sports.yahoo.co.jp/
《刑部》
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/7136/linker.html
《司法統計年報 平成18年度》最高裁判所(裁判所ウェブサイト)
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B18DKEI26.pdf
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B18DKEI53.pdf
《裁判所ウェブサイト》
http://www.courts.go.jp/
posted by 絶坊主 at 10:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 盗んだ事件(裁判傍聴記) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あ…。
なんだかセンチメンタルジャーニー(懐)な気分になりました〜。

とっても、ありがとうございます ですぅ〜♪
Posted by りぃ子 at 2008年07月09日 22:16
りぃ子さん、コメントありがとうございます。

よろしかったら記事のどの辺りでそのような気分になったのか教えていただけますでしょうか。
今後の参考とさせていただきます。
Posted by 絶坊主 at 2008年07月09日 23:02
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/102421775
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。