[PR]
総合離婚情報「リコナビ」
なぜか人気の防犯アイテム「センサーライト」で侵入者を静かに撃退!

2007年04月08日

私の不都合な真実 「どうせ刑務所に入るなら…」刑務所志願のおじいさんが痴漢

 被告人は、60代の男性で、路上において女性の臀部を触った疑いで、強制わいせつの罪に問われています。
 彼は、前刑出所後、弟さんの家に居候していました。しかし、犯罪歴がたくさんあり、長いこと刑務所で暮らしてきた彼を、雇う会社はありませんでした。
 彼は、生活に困るようになり、ある考えが浮かんできました。


【注意事項】
 この記事は、私が裁判傍聴で必死こいて書き殴ったメモを元に、なんとか記憶を辿って書いたものです。もしかしたら、実際に裁判で起こったことと、全然違うかもしれません。
 また、私に法律の知識はありません。
 偏った思いこみや思想が文章に紛れ込んでいるかもしれません。極力避けるように努力します。ご了承下さい。
 この記事が事件の真実を言い当てることなどございません。
 無いとは思いますが、無断転載はご遠慮下さい。引用は法律を守ってご自由にどうぞ。
 リンクはご自由にどうぞ。ただし、画像等への直リンクはおやめ下さい。
 登場人物のイニシャルは本名と無関係です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《私の不都合な真実 「どうせ刑務所に入るなら…」刑務所志願のおじいさんが痴漢》
【強制わいせつ】『新件』
名古屋地方裁判所703号法廷
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★登場人物★☆
Iさん(被告人。60代ぐらいの男性。小太り。ほとんど白髪。耳が遠い。滑舌が悪い)
検察官(30〜40代ぐらいの男性。生真面目そう)
裁判官(50代ぐらいの男性。阿藤快さん風)
弁護人(詳細忘れました)


[起訴状朗読より]
 被告人は、平成18年*月*日午後**:**頃、■■市内の歩道において、被害者女性の下着に手を入れて、臀部を触ったものである。
罪名および罰条 強制わいせつ 刑法176条


裁判官:「今読んでもらった公訴事実に何か間違ったところはありましたか?」
Iさん:「はい。認めます」

[冒頭陳述より]
 被告人には、準強姦、詐欺、常習累犯窃盗などの、前科が多数あります。
 被告人は、前刑出所後、独身の弟の家で、一緒に暮らしていました。兄の家へ向かう途中での犯行でした。犯行後、様子を見に再び現場へ戻ってきたところ、目撃者らによって現行犯逮捕されました。

[乙号証より]
・被告人の供述調書
「前刑後、性欲がたまっていたので、どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてからと思い、犯行を決意しました」


 私は、Iさんのあまりに短絡的すぎる動機に、頭がクラクラしました。本当に、頭の中で鐘を鳴らされたように、「ブォォォーン、ブォォォーン…」という振動のようなものを感じて、倒れるんじゃないかと思いました。今でも、当時のことを思い出すと、あの時の感覚が、瞬間的によみがえります。

 どうしてここまで衝撃を受けたのか? 一つにはIさんの身勝手すぎる動機があります。また、常習累犯窃盗や準強姦などの犯罪歴がたくさんあり、前科前歴だけで判断するなら、今まで見てきた被告人の中でもトップクラスの悪人でした。
 しかし、それ以上に衝撃的だったのは、私にとって、Iさんが不都合だったからです。
 私は、何度も繰り返して、「刑務所志願者を社会内にとどまらせたほうが良い」と、書き続けてきました。ほとんどの刑務所志願者は、マジメに生活する意欲があるものの、誰からも相手にされないため、飯が食えなくなって犯罪に手を染めてしまうのです。それならば、税金を使って刑務所に入れるよりも、就職先を世話した方が社会が負担するコストは少なくなります。私は、「刑務所志願者を刑務所へ入れ続けるのは、社会にとって割に合わないのではないか」と、考えるようになりました。
 しかし、刑務所志願者にここまで迷惑な人がいることを知って、今までの考えを打ち破られた気分になりました。

 さて、気を取り直して、弁護人立証へと移ります。弁護人は被告人質問を請求しました。
 Iさんは、目玉をギョロギョロさせながら、抑揚のないうわずった声で、単語だけをどうにか発しているようでした。

弁護人:「出所して12日ぐらいで今回の犯行に及んどるね?」
Iさん:「はい」
弁護人:「その前も、出所後10日ぐらいで犯行に及んどるけど、すぐ事件を起こしちゃうのはどうしてなの?」
Iさん:「兄貴と相談してないからです。電話しても一方通行だもんで」
弁護人:「援助してもらえなかった?」
Iさん:「はい」
弁護人:「あなたがやってきたことを考えれば仕方ないわな」
Iさん:「はい」
弁護人:「それから、あなたは、弟さんのところで居候させてもらっとったそうだね?」
Iさん:「はい」
弁護人:「生活するために何かやっとったの?」
Iさん:「やってない」
弁護人:「ご飯とかはどうやって食べとったの?」
Iさん:「兄貴からもらった金で」
弁護人:「だけど、お兄さんも、いつもいつもくれるわけなじゃいわな?」
Iさん:「はい」
弁護人:「今回の犯行時、お金は持ってた?」
Iさん:「ない」
弁護人:「弟さんだけど、あなたに対して、『家にずっといていい』と、言ってくれとった?」
Iさん:「違います」
弁護人:「むしろ、『出て行け』と、言われとったんですね?」
Iさん:「はい」
弁護人:「それから、本件の直前に、置き引きと無銭飲食をしとるね?」
Iさん:「はい」
弁護人:「今回の痴漢ね、わざわざ様子を見に戻っとるけど、私から見ると捕まることを望んでいるように見えるけど?」
Iさん:「そういう気ありました」
弁護人:「住むところも仕事もないから刑務所に戻りたいと、こう思ったんですか?」
Iさん:「はい」
弁護人:「捕まるための行為は何でも良かったの」
Iさん:「はい」
弁護人:「あなたの調書を見るとね、『どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから』と、書いてあるけど、これは取り調べで言ったの?」
Iさん:「はい」
弁護人:「これを読むとね、刑務所に入るという前提があって、どうせなら性欲を満足させてから、と読めるけど?」
Iさん:「はい」
弁護人:「別に刑務所が好きなわけじゃないでしょ?」
Iさん:「はい」
弁護人:「だけどね、出所しても仕事ないのは、自分が原因じゃないの?」
Iさん:「はい」
弁護人:「自分の行いで家族にも愛想尽かされているんじゃないですか?」
Iさん:「はい」
弁護人:「あなたはいくつになりましたか?」
Iさん:「6*です」
弁護人:「服役はずいぶん長いですね?」
Iさん:「はい」
弁護人:「出所後だけど、生活保護の受給を、考えたことがあります?」
Iさん:「あります」
弁護人:「役所に行ったことはありますか?」
Iさん:「ありません」
弁護人:「どうしてですか?」
Iさん:「分からない」
弁護人:「『分からない』と言うのは、やり方が分からないし、通るかどうか分からない、こういうことですか?」
Iさん:「はい」
弁護人:「この前、教えましたよね? 覚えてます?」
Iさん:「はい」
弁護人:「あの時はあまり乗り気じゃないみたいだったけど、出所したら申請する気になりましたか?」
Iさん:「少しはなりました」
弁護人:「分からなければ、私のとこ来てもいいですよ」
Iさん:「はい」
弁護人:「もし、生活保護もらったら、再犯はないんじゃないですか?」
Iさん:「分からない」
弁護人:「そういう生活をしたことがないから『分からない』んじゃないですか? 住むところとお金があったらしないんじゃないですか?」
Iさん:「はい」
弁護人:「だけどね、あなたがいくら困っていたとしても、被害者には何の関係もないですよ」
Iさん:「『どうもすいません』と言うしかないですな」


 Iさんは、弟さん宅に居候しながら、お兄さんを頼りにしていたようです。しかし、彼は、弟さんからは「出て行け」と責められ、お兄さんからは思うようにお金をもらえず、追い詰められていきました。

 Iさんは、犯罪、服役、出所、犯罪、服役、出所…を、繰り返していたため、労働市場から追い出されてしまいました。もちろん、弁護人が指摘するように、「自分が原因」であることに間違いはありません。仕方のないことでしょう。
 しかし、彼が仕事に就けなくなったために、関係のない被害者が苦しむのは不条理です。また、刑務所に行くとしても、生活保護を受給するとしても、彼の生活は税金でまかなわれます。

 Iさんが犯行に至った大きな原因として、
・「住むところも仕事もないから刑務所に戻りたい」
・「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」
という2点が挙げられます。
 ですから、Iさんによる犯罪を防ぐためには、住居と収入源を確保してやればよいのです。こう考えると、たとえ税金であっても、彼を養う利益はあるのでしょう。ただし、刑務所に行ってもらうのは、費用対効果が少ないと思います。彼に矯正教育を施しても、たいして変わらないのです。なぜなら、今までに何十年も、彼は刑務所で暮らしていたのですから。それに、もし、彼が刑務所で要介護になったら、刑務官の負担が増えてしまって、「治安最後の砦」たる刑務所は、その機能が低下すると考えられます。
 私は、Iさんのような方を生活保護で養うのは、積極的には賛成できませんが、仕方がない部分もあると思います。
 ただし、年金受給者よりも生活保護のほうが高くなってしまうと(たぶんIさんは年金保険料を払っていなかったでしょう)、不公平感を招くため、多くの人々が不満を表すかもしれません。
 どうやら、一概にどちらが良いとは言えないようです。

 続いて検察官からの質問です。

検察官:「あなたは、『どうせ刑務所に入るなら』と言ってますけど、無銭飲食の後に警察に行こうと思わなかったんですか?」
Iさん:「思わなかった」
検察官:「何で女の子を襲ったの?」
Iさん:「金もないし、刑務所に行こうと思って」
検察官:「一番大きい動機は『女の子を襲いたいから』じゃないんですか?」
Iさん:「はい」
検察官:「性的な欲求を我慢できずに襲ったんですね?」
Iさん:「はい」
検察官:「『また襲ってしまうんじゃないか』と、不安になりませんか?」
Iさん:「まー、やらないようにします」
検察官:「どうやってやらないようにするの?」
Iさん:「なるだけ、兄弟に、手紙のやりとりします」
検察官:「あなたの兄弟が面倒みてくれると思います?」
Iさん:「見ないですな」
検察官:「じゃあ、その方法は、難しいんじゃないですか?」
Iさん:「はい」
検察官:「襲われる女の子の気持ちを考えたことがありますか?」
Iさん:「考えてないです」
検察官:「(不安そうに)今まで一度も考えたことない?」
Iさん:「はい」
検察官:「今後、まじめに生活する気はありますか?」
Iさん:「こうやって社会に出ても、仕事もないし、何とかして仕事に就こうかなーって気持ち、ありますけど…」


 Iさんは、「女の子を襲いたいから」という動機を、あっさりと認めました。今までの、「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」という動機は、どこへ行ってしまったのでしょう。先ほど、「Iさんによる犯罪を防ぐためには、住居と収入源を確保してやればよい」と述べましたが、自信がなくなってきました。住居とお金を与えたのに痴漢されてはたまりません。
 ただし、検察官の質問も微妙です。Iさんの動機と思われる発言を挙げてみます。

A.「住むところも仕事もないから刑務所に戻りたい」
B.「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」
C.「一番大きい動機は、女の子を襲いたいから」
D.「性的な欲求を我慢できずに襲った」

 4つ並べてみると、これらの動機は、さほど矛盾していません。時系列順に言うと、

(1)まず、A.「住むところも仕事もないから刑務所に戻りたい」と、思っていて、

(2)C.「一番大きい動機は、女の子を襲いたいから」(つまり性欲がたまっていて)、B.「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」を、同じ頃に考えて、

(3)被害者を発見し、D.「性的な欲求を我慢できずに襲った」、
つまりは衝動に駆られて犯行に至ります。

 もちろん、ずっと前から、「女の子を襲いたい」と思っていて、犯行直前に「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」と考えた可能性もあるでしょう。まあ、いずれにしても、身勝手な動機に変わりありませんし、実刑はまぬがれないと考えられますので、判決には影響なさそうですが…。

 犯罪の動機は様々な要素が絡み合っています。ですから、どれを証拠として採用し、判断の材料にするのかによって、事件が違って見えてくるのです。ただし、私の経験にもとづく感想にすぎませんが。


裁判官:「誰か面会に来てくれた?」
Iさん:「兄貴が来たけどな」
裁判官:「お金持ってきてくれた?」
Iさん:「はい」
裁判官:「どんな話をしたの?」
Iさん:「『心配しとるよ』って話して、自分も『うー』って言って、終わりました」
(略)
裁判官:「自分で生活保護とか考えなきゃダメだな」
Iさん:「はい」

 Iさんは、せっかくお兄さんが来て、「心配しとるよ」と言ってくれたのに、「うー」としか答えなかったそうです。どうして感謝の気持ちを伝えられないのかと情けなくなります。
 Iさんを見ていて思うのは、相手の気持ちを考える能力が低い、ということです。これ以外にもありましたので以下に書き出します。

●出所後すぐに再犯に及んだ理由について「兄貴と相談してないから」だと思っている。
 60代になるまで犯罪を繰り返してきて、兄弟に迷惑をかけ続けてきたのに、頼れば何とかなると思っています。

●検察官から、「一番大きい動機は、女の子を襲いたいから、じゃないんですか?」と、不利になる質問を受けたのに、「はい」と答えている。
 普通ならウソでも否定するのではないかと思います。刑期を長くしたいという計算、とも考えられますが…。

●襲われる女の子の気持ちを一度も「考えてない」。
 加害者であれば、被害者が嫌がったり悲しんだりする姿を、見ているはずなので、一度も考えたことがないとは驚きです。こちらも、刑期を長くしたい、という計算かもしれませんが…。


 これらの言動は、彼の規範意識の低さがそうさせるのか、性格的のものなのか、口下手なのか、計算なのか、脳に何らかの問題があるのか、ちょっと分かりません。とはいえ、この原因が分かったところで、彼の年齢を考えると、改善は難しいと思います。脳の問題であれば医療の助けを借りればよいのですが、それ以外の場合は対応が難しいでしょうね…。

◎検察官による論告求刑はおおむね以下の通りです。
「どうせ刑務所に入るなら性欲を満足させてから」という身勝手な動機に酌量の余地はない。
 強引で暴力的な手口だった。犯行対応は悪質である。
 被害者は、その道を二度と歩けず、夜道にも出られないほどの、心に傷を負った。
 規範意識は欠落している。性的偏向も見られる。
 懲役2年6月の実刑が相当である。

◎弁護人による弁論はおおむね以下の通りです。
 素直に犯行を認めて反省している。
 生活保護を受ければ、正確に困って刑務所に行きたくなることもなくなり、悪循環を断ち切れる。
 従って再犯の恐れはない。
 できるだけ寛大な判決を願う。


裁判官:「最後に、裁判所に対して、何か言っておきたいことはありますか?」
Iさん:「別にないです」

 判決は2週間後と決まりました。私は、傍聴には行きませんでしたが、ほぼ求刑通りの実刑判決が出ただろうと思います。


 さて、ここからは、Iさんが生きてきた時代における、性犯罪の状況を調べてみようと思います。
 まず、犯罪白書より、強姦、強制わいせつ、公然わいせつの、検挙人員を調べます。Iさんが10代だった頃を想像するために、少年についても同様に調べます。犯罪白書は、自分の経済力を考慮して、以下のサイトで閲覧させていただきました。

法務省白書等データベース
http://hakusyo1.moj.go.jp/

 これだけですと、検挙人員が人口の増減の影響を受けます。「ワシの世代に検挙人員が多いのは、単に人口が多いだけだ!」という反論もあるでしょう。確かにおっしゃる通りです。ですから、人口10万人あたりの比率を計算します。小数点は千分の一の位以下を四捨五入で処理します。人口は、総務省統計局「人口推計」、を参照します。これは、千人単位のデータですが、今回の目的を考えると、問題のない誤差だと思います。

総務省統計局「人口推計」
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm

 計算式は、例えば強姦の場合、以下の通りです。

強姦の検挙人員 ÷ 総人口 × 100,000 = 人口10万人あたりの比率
少年の強姦の検挙人員 ÷ 10〜19歳の人口 × 100,000 = 人口10万人あたりの比率

 それでは、結果を見てみましょう。

SeiZentai.gif
SeiShounen.gif
※空欄は検挙人員が不明のものです。「わいせつ」は、犯罪白書で「わいせつ」「わいせつ等」「強制わいせつ等」として分類されていたものです。定義は不明です。したがって、それ以外の年では、強制わいせつと公然わいせつを選び、比率を計算し、記しておきました。


 さて、最も印象的なのは、Iさんが10代だった頃の、少年の強姦罪検挙人員が飛び抜けて多いことです。この時代の少年達が凶暴だったということなのでしょうか。特定の年代に凶暴な人間が生まれてくるなんて、そんなおかしなことは考えにくいのですが…。少年達の心の闇に何があったのでしょう。
 少年の強姦に関して、インターネット上に、詳細なデータを見つけました。

少年のレイプ統計グラフ(「少年犯罪データベース 」より)
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Rape.htm

 どうやら、昭和33年頃から少年の強姦罪検挙人員が急増し、その後10年近くは高い水準で推移し、昭和40年代中頃には急激な減少を始めています。
 それとは違い、昭和43年には、少年の強制わいせつ等の検挙人員が多くなっています。ただし、強姦未遂と強制わいせつの線引きは難しいため、捜査機関の方針や裁量に左右されてしまいやすく、分析は難しいと考えられます。あくまでも検挙人員ですからね。

 グラフの注釈に、
2人以上が共謀した強姦は昭和33年から非親告罪となり急増している。それ以前の数値は注意。
特に戦前は強姦の検挙率が100%でほとんど親告がなかったらしい。

「少年犯罪データベース 」より
とあります。どうやら、昭和33年から少年の強姦罪検挙人員が急増した一因は、親告がなかった集団強姦の暗数が、一気に検挙されるようになったためだと考えられます。心の闇というより、数字の闇といいますか、法整備と警察・検察の対応が改善された結果です。
 もちろん、他にも原因はあるかもしれません。私にはちょっと思い付きませんが…。

 ところで、少年の強姦罪検挙人員が激減する昭和40年代中頃に、何か変わったことがないか「数字で見る 日本の100年」((財)矢野恒太郎記念館 発行)をながめてみると、電話加入契約数が激増している(第10章、表10-23)ことに気付きました。
 当時は、プッシュ回線など無くて、ダイヤルをせっせと回す、黒電話だったはずです。

 黒電話が少年の強姦を抑止する…?

 そんなことが本当にありうるのでしょうか? 非行少年達は、ダイヤルを回すことによって、我慢する大切さを、学んだのでしょうか? バカバカしいとしか思えません。
 黒電話が普及したのですから、少なくとも、離れたところに連絡する必要に迫られたのは確かです。それは、田舎を離れて都会に就職する人が増えた、と考えることができます。
 都会を中心とした好景気によって、税収が上がり、電話回線の整備が進みます。産業の発展とともに、黒電話を大量生産する技術が開発され、安く提供できるようになります。そして、その周辺で雇用が生まれ、さらに景気が良くなり、電話料金を払う余裕のある世帯が急増していった…。そう考えると、黒電話一つから、世の中の劇的な変化が見えてきます。

 たぶん、高度経済成長とともに、雇用が生まれ、電話の技術が向上し、家計が楽になっていったのでしょう。そして、一億総中流という意識が芽生え、多くに親が「いい大学に入っていい会社に入る」、もしくは「せめて高校ぐらいは出ておかないと」と子どもに望むようになります。こうなると、子どもの頃から人生設計を立てる必要が出てきます。おかげさまで、将来のある子ども達は、少年時代の強姦に、進学が不可能となるリスクを感じるようになります。そのため、昭和40年代には、より社会的責任の少ない、強制わいせつ等へ移行したと言えるかもしれません。もしくは、強姦の激減によって、強制わいせつ犯を検挙する余力が、警察にできたのかもしれません。
そして、ポルノ雑誌が登場し、風俗店が工夫を凝らしたサービスを提供するようになり、さらにはテレクラが登場し、(お金さえあれば)性欲の発散が簡単になりました。これらは、春画、遊郭、夜這い、などの現代版なのでしょう。

 それから、黒電話の普及によって、被害者が相談、通報しやすくなったかもしれません。
 ただし、先述した「少年犯罪データベース」には、電話で被害者を呼び出して強姦する事件も載っています。ですから、黒電話で少年の強姦を抑止するという説は、やはり妥当とは言えません。
 たぶん、黒電話と少年の強姦に因果関係はないものの、それぞれに影響を与えた存在があるのだろうと思います。それが、高度経済成長と深く関わっていることは、間違いないでしょう。
 黒電話と少年の強姦について、ていねいに文献を調べて、理論的に書いていくと、読み物として良質なものになったかもしれません。しかし、ちょっと疲れてしまって、断念しました。紋切り型ですみません。

 さて、話を戻します。Iさんは、少年による強姦が、急増とは言い切れませんが、少なくともたくさん検挙されていた時代に、多感な少年時代を送っていました。当時は、現在の規範、価値観とは、全く違っていたのかもしれません。それは言い過ぎにしても、10代だった頃のIさんは、今ならモンスター扱いされる非行少年ですが、当時は珍しくなかったと言えるかもしれません。
 その後、多くの人々は、悪さよりも就職を選び、その後の高度経済成長を謳歌しました。その間に、世の中は変わり、仕事が増えて、少年達は目先の欲望よりも進学を優先し、治安が良くなりました。かつての非行少年達も、職場の雇用主らに叱られるなどして、考えを改めたでしょう。
 しかし、Iさんは、いつの頃からか、ムショとシャバを往復するようになりました。もし、刑務所がタイムカプセルの役割を果たし、今でも昭和33年の頃と同じ考え方をしているとしたら、彼の身勝手な動機を説明できるのではないか……。
 いや、想像の域を出ません。Iさんと同世代の方々でも、ほとんどの方はマジメだと思います。受刑者の年代別割合を見る限りでは、彼の世代が横滑りしている証拠は、得られませんでした。多くの非行少年は更生したのでしょう。

 それとも、Iさんのコミュニケーション能力こそが問題で、相手の気持ちを考えられないため、女性との関係をうまく作れなかったのかもしれません。それによって、普通の恋愛を経験できずに、性欲の発散がうまくいかなかったとも考えられます。

 むしろ、時代、Iさんのコミュニケーション能力、ともに関係しており、その他の要因と合わさって、「どうせ刑務所に入るなら」という、今のIさんになったと考える方が妥当かもしれません。

 特に、性愛に関しては、相手を気遣えないと、なかなかうまくいかないと思います。これにつきましては、「お前が言うなよ」との反論もあるでしょうから、「愛について ―人間に関する12章―」(五木寛之 著、角川書店 発行)を参照して下さい。著者の五木さんは、3章に渡って(第八章、第十一章、第十二章)、性愛について述べておられます。恋愛に関する章はもちろん、第八章のD・H・ロレンス考え方や、第十一章で紹介されているジョン・ノイズのカレッツァ理論は、大変役立つでしょう。これらは、相手と協力し合うことでのみ、大きな快感が得られるものです。知らずに死んでいくのはもったいないです。

 とはいえ、Iさんの場合、今さら矯正教育、人付き合いを見直すと言っても、ご兄弟にすら迷惑がられていますから、ほとんど不可能です。
 ただし、60代ですから、体力が落ちていくことは確実で、痴漢ができるのも今のうちです。犯行の手口は単純で、隠ぺいする気も全くありません。あと20年元気に生きるとして、刑を少なめに見積もって2年で計算すると、10人の被害者が発生します。いや、やっぱり多いですね。10人も被害者を出してはいけません(もちろん一人も出してほしくはありませんが)。

 とにかく、女性を襲うのだけは、やめて下さい。本件で言えば、検察官が指摘したように、無銭飲食の直後に自首してくれたらありがたかったです(飲食店にはありがたくないのですが)。

 どうにか、五木さんの本を読むなどして、恋愛と性愛の素晴らしさを学んで下さい。出所が2年半後としても、まだまだ60代ですから、ガールハントも可能です。どうにか立ち直って、性欲は普通に恋愛して発散するか、ポルノ雑誌を利用して下さい。ポルノ雑誌であれば1,000円前後、ヌードの載った週刊誌なら400円程度で、それぞれ購入できます。有効利用して他人に迷惑をかけないよう気を付けて下さい。お願いします。
 犯罪をしないで生活していれば、ご兄弟との仲も改善し、楽しく暮らせるようになるでしょう。お世話になったら感謝の気持ちを伝えて下さい。「それができれば刑務所なんか行かないよ」とおっしゃるかもしれませんが…。

 今回の被告人は、犯罪歴だけを見ると、極悪人に思えました。実際には、コミュニケーション能力が低く、周りとうまくやっていけない、何とも情けない人物でした。自力で立ち直ることはできないでしょう。助ける側のご兄弟ですら手に負えないようですから、いずれは、刑務官からの介護をうけて暮らすようになり、刑務所内(もしくは搬送された病院)で一生を終えるのだろうと思いました。彼の人生を考えると、当然の報いとも、気の毒とも思えてきて、複雑な気持ちになりました。今でも、何か重大なことを見落としているのではないかと、焦燥感に駆られます。


◎今回分かったこと
・衝撃の事実を突きつけられると頭がクラクラします。
・たまには極悪な犯罪歴の刑務所志願者がいるようです。
・昭和33年には強姦罪で検挙された少年がたくさんいました。
・犯罪ばかりしていても、ご家族は、「心配しとるよ」と、言ってくれるかもしれません。
・感謝の気持ちを伝えましょう。
・できれば、「性欲を満足」させる前に、自首して下さい。
・被害者の気持ちを考えましょう。
・女性を口説けるように自分を磨いて下さい。
・愛のことなら五木寛之さんにききましょう。
・法に触れない方法で性欲を満足させましょう。


参考文献:
「犯罪統計入門」(浜井浩一 編著、日本評論社 発行)
「犯罪白書」〈昭和35年版、昭和44年版、昭和54年版、平成元年版、平成11年版 犯罪白書、平成17年版ほか〉(法務省法務総合研究所 編、国立印刷局 発行)
「数字で見る 日本の100年」((財)矢野恒太郎記念館 発行)
「愛について ―人間に関する12章―」(五木寛之 著、角川書店 発行)
「一日江戸人」(杉浦日向子 著、新潮社 発行)
「図解雑学 こんなに面白い民俗学」(八木透 政岡信洋 著、ナツメ社 発行)
少年犯罪データベース
http://kangaeru.s59.xrea.com/
総務省統計局
http://www.stat.go.jp/
法務省白書等データベース
http://hakusyo1.moj.go.jp/
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( Wikipedia の執筆者たち 著、Wikipedia 発行)
http://ja.wikipedia.org/
「黒電話」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E9%9B%BB%E8%A9%B1
「ポルノ雑誌」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E%E9%9B%91%E8%AA%8C
「テレフォンクラブ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%96
「風俗店の歴史」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E4%BF%97%E5%BA%97

[PR]
「愛について ―人間に関する12章―」(五木寛之 著、角川書店 発行)


[PR]
ラベル:名古屋 裁判 痴漢
posted by 絶坊主 at 14:22| Comment(2) | TrackBack(0) | わいせつ事件(裁判傍聴記) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、検事志望の13歳です。
周りから「ガキのくせに何言ってんだ」
なんて言われて図書館に行ったら、
このページ(ブログか?)を薦めている本を見つけました。
女性検事って少ないんですよね。
今出来る事ってないんでしょうか。
絶坊主さんの意見が聞きたいんです!!
お返事宜しくお願いします。
Posted by ピーマン at 2008年08月21日 14:32
ピーマンさん、はじめまして。

ど、どうしましょうね。検事どころか就職のアドバイスすらできない私です…。
でも、せっかく私に尋ねて下さいました。ネットで調べたことを並べる程度の回答しかできませんがお許しください。


検事になる一般的な方法はこちらです(法務省 http://www.moj.go.jp/ より)。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/KENJI/kenji03.html

ありきたりな話ですが…、
検事になるために必要なのは、優秀な学力と、お金です。

先ほどのリンク先にあった方法だと、法科大学院へ入る必要があります。そのためには入学試験に合格する必要があります。

ピーマンさんは、現在13歳とのことですから、まずは、それなりの高校、大学への進学が必要となります(詳しくは学校の先生などに相談してください)。
法科大学院に入るには国語や社会が重要かと思います。進学のため、とくに国語や社会などを、お友達や先生があきれるぐらいに勉強してください。

それから、大学、大学院、司法試験には、とてもお金がかかります。保護者の方にお金を出してもらうには、たくさん勉強して、いかにもピーマンさんが「司法試験に合格しそう」という希望を抱いてもらう必要があります。
今後、例えば国がお金の援助をする、というような制度ができるかもしれませんが、その場合にも合格しそうな人が優先されると思います。

最近知ったのですが、私が13歳の時に同じクラスだった人が、裁判官か、検察官になっているようです。その人は、「いつ遊んでいるんだ?」と思うぐらい勉強ばかりしていて、いつも成績は学年で3位以内ぐらいでした。家は大きく、上品なお母様がいらっしゃいました。お金に困っている様子はありませんでした。

ちょっと難しいですが、法務省のホームページにもたくさんの情報が載っていました。
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/index.html

現在では女性検事の採用は決して少なくありません。能力さえあれば性別を理由に落とされるようなことはないと思います。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/KENJI/kenji03-01.html


可能性は高くないかもしれませんが、検事になるには別の方法があります。
検察庁ホームページ↓の《採用情報》をクリックしてください。検察庁には、検事のほかに、副検事、検察事務官が働いています。
http://www.kensatsu.go.jp/

検察事務官→副検事→検事
という道があります。

国家公務員採用II種試験、国家公務員採用III種試験に合格して、検察庁が行う面接に受かれば、検察事務官として採用されるそうです。ひとまず、法科大学院や司法試験は不要です。

先に検察庁に就職してしまおうという方法です。

仮に検事になれなくとも、検察事務官は、検事とともに社会正義のために働く、とても立派な仕事です。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/SAIYO/message.html#03-01

検察庁の女性採用は、少なくとも30%以上はあるようです。女性の採用は決して低くはないと思います。
http://www.moj.go.jp/KANBOU/SAIYO/jyokyo.html
http://www.moj.go.jp/KANBOU/jinji10.html

私は、女性が少ない、という点については、気にすることはないと思います。今のところ、女性の採用が減るという可能性は、排除していいと思います。
http://www.jinji.go.jp/saiyo/jyosei/toppage.htm
http://www.gender.go.jp/honbu/160427.html

裁判では何でも理屈で説明されています。直感だけでは相手にされません。簡単なことも、難しいことも、相手を納得させられるよう、理屈立てて説明できる力は必要だと思います。
法令や証拠は調べれば出てきます。しかし、理屈立てて説明することは、自分だけが頼りです。
どんな議論にも負けない国語力が必要だと思います。
これは、国語の基礎+人生経験が必要だと思うので、今やるべきことではないのかもしれません。どんなことでも、基礎をすっ飛ばして小手先のテクニックを学んでも、たいして強くなれません。


私は、法廷に立ち会う検察官しか見たことがありません。
彼らは、被告人が気の毒な境遇であっても、不利な事情を引き出そうと、場合によってはいじわるな質問をくり返します。
もちろん、いじわるをしているわけではないのです。不利な事情を主張しなければ、被害を受けた人が損をするかもしれませんし、犯罪をした人にふさわしい罰が与えられないことになります。

社会正義のため、仮に自分の心の奥底で被告人に同情しても、仕事は仕事として嫌な役目もできることが重要だろうと思っています。
Posted by 絶坊主 at 2008年08月21日 18:22
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。