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2007年05月01日

些細なケンカだったはずが放火罪に… 供述調書に「ごまかしがあった」と弁護人

 被告人は、若い女性で、交際相手とのケンカ中に火を点けた疑いで、現住建造物放火の罪に問われています。といっても、放火に関しては、交際相手に危害を加える目的はなく、世間一般で言う放火のイメージとはずいぶん違います。

 検察官は、起訴状朗読において、「家屋の焼損を認識」していた旨を述べました。
 対する弁護人は、まだ方針をはっきりさせていないものの、「余事記載が多い」「被告人はよく理解できないまま署名捺印してしまった」などと、供述調書に問題がある旨を主張しました。

 裁判を見ていると、供述調書に関するトラブルは、たびたび目にします。果たして、供述を記録した書類にトラブルが多い理由は、一体何なのでしょうか?

 今回は、検察官立証まで行われた、初公判の模様をお送りします。


【注意事項】
 この記事は、私が裁判傍聴で必死こいて書き殴ったメモを元に、なんとか記憶を辿って書いたものです。もしかしたら、実際に裁判で起こったことと、全然違うかもしれません。
 また、私に法律の知識はありません。
 偏った思いこみや思想が文章に紛れ込んでいるかもしれません。極力避けるように努力します。ご了承下さい。
 この記事が事件の真実を言い当てることなどございません。
 無いとは思いますが、無断転載はご遠慮下さい。引用は法律を守ってご自由にどうぞ。
 リンクはご自由にどうぞ。ただし、画像等への直リンクはおやめ下さい。
 登場人物のイニシャルは本名と無関係です。


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《些細なケンカだったはずが放火罪に… 供述調書に「ごまかしがあった」と弁護人》
【現住建造物等放火】【覚せい剤取締法違反】『新件』
名古屋地方裁判所一宮支部1号法廷
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☆★登場人物★☆
Jさん(被告人。20代前半の女性。かなりの美人。終始うつむきながら泣いている)
弁護人(30〜40代ぐらいの男性。大柄でコワモテ。ジャーナリストの須田慎一郎さん風)
検察官(30代ぐらいの男性)
裁判長(30〜40代ぐらいの男性。羽生善治名人風のインテリ男子)
右陪席(裁判長と同じ雰囲気の男性)
左陪席(裁判長と同じ雰囲気の男性)
Mさん(Jさんの交際相手)


 一宮支部の1号法廷は、弁護人席側に大きな窓があって、とても明るかったです。また、法廷は広く、映画館タイプの椅子でした。


[起訴状朗読]
公訴事実(一)
 被告人は、交際相手のMに足蹴にされたことなどから、木造平屋建てM方において、**月**日午前9:00頃、家屋の焼損を認識していながら、和室に敷いてあった布団に灯油を撒き、ライターで火を点け、もってこれを焼損させたものである。
罪名及び罰条 現住建造物放火 刑法108条

公訴事実(二)
 被告人は、法廷の除外事由がないのに、交際相手のM方において、**月**日(放火の前日)、覚せい剤を含有するフェニルメチルアミノプロパンの水溶液を、Mから自己の身体に注射をしてもらい、もってこれを使用したものである。
罪名及び罰条 覚せい剤取締法違反 同条41条の3第1項第1号、第19条


裁判長:「今読んでもらった公訴事実に何か間違ったところはありましたか?」
Jさん:「覚せい剤のほうは間違いありません。放火のほうですけど、家に火が燃え移るとか、その人の家を燃やしてやろうとか、思ってはいませんでした」

弁護人:「放火は放火の故意を争います。『家屋の焼損を認識していながら』の部分を否定しますが、結果的に焼損させたことは認めます」


 ここには記していませんが、裁判長は、大変不服そうな様子で、何度も聞き返していました。
 裁判を進めるにあたって、『家屋の焼損を認識』していないと、大きな問題があるのでしょうか。本人が主張しているだけだというのに。
 なにぶん素人なものでさっぱり分かりません。

[冒頭陳述]
 被告人はMと交際していました。被告人は、覚せい剤を使っていたMに、注射してくれるように頼みました。この時の動機は「興味本位」でした。今までに20回ぐらい使用した旨を供述しています。
 事件(二)当日、被告人は、Mから「やる?」と問われ、「うん」と答え、腕を差し出しました。被告人は、自ら注射ができないので、いつもMに注射してもらっていました。
 事件(一)前日、被告人は、M宅に来ました。その後、些細なことから口論になり、AM8:00になっても続いており、Mが灯油を持ち出して撒きました。この時は50cmほどの染みができました。被告人は、口論に嫌気がさし、M宅を出ようとしました。その時、Mは、被告人の顔面を1回蹴りました。被告人は、洗面器一杯分ぐらいの、灯油をかぶりました。さらに、被告人がマッチを点けるそぶりをしましたが、Mが止めに入りました。
 再び口論となり、Mは「オレが火を点けてやる」などと言いました。
 被告人は、嫌気がさし、敷いてあった布団に、灯油を撒いてライターで火を点けました。この時、被告人は、「布団が木の柱にくっついていることを認識していた」、と供述しております。
 被告人とMは、枕で叩いて消火しようとしたものの、家に燃え移りました。その後、消火器などで消火しようとしましたが、消火することができず、119番通報しました

※5/16訂正: 被告人は一旦現場から離れました。その後、近隣住民が、火事に気付き、119番通報しました。
※6/1訂正: 被告人は灯油を撒いておりません。
(間違いましたことを深くお詫びいたします)

 その後、消防の消火活動によって、消火しました。


 私は、これで現住建造物等放火罪に問われるのかと、被告人のJさんを気の毒に思いました。Jさんには、最初にMさんが灯油を撒いたこと、彼に足蹴にされたことなど、同情の余地がありそうです。ただし、放火の前日に覚せい剤を使っていた点には、あまり同情できません。
 ところで、「常識としての刑法」(板倉宏 著、ナツメ社 発行)では、放火罪は「国家と公衆の安全に関する罪」に分類されています。確かに、炎が隣の家屋に燃え移ってしまったら、多くの人々の生命と財産に危険を及ぼします。ですから、Jさんの事情と、焼損させた範囲と、公衆に与えた危険を、総合的に考慮して、判断する必要があるのでしょう。
 裁判官の仕事は大変です。裁判員に選ばれたら覚悟を決める必要がありそうです。

 その後、乙号証について、弁護人が意見を述べました。私は、彼と裁判長とが、長いこと揉めているのを追えず、メモでませんでした。
 弁護人の主張は、「被告人の真意ではない部分がある」「余事記載が多い」「偽計ごまかしがあった」「被告人はよく理解できないまま署名捺印してしまった」など、供述調書がおかしいという内容でした。
 どうやら、捜査機関によって、供述調書に言ってないことまで書かれて、犯行のシナリオを脚色されてしまったという主張のようです。刑事裁判ではよく見かけるトラブルです。

 検察官は、同意部分は抄本で請求し、他は「任意性を争わないのであれば322条にあてはまるのでは?」と言いました。
 結局、任意性を争わないということで、同意部分はもちろん、不同意部分も刑事訴訟法の322条を理由に、採用されました。

[甲号証より]
・木製の柱が黒く炭化したことを明らかにする写真
・近隣住民らによる「長屋ではないが隣接している」旨の供述
・火が出ている時の目撃証言「被告人らが消火活動していた」
・Mさんの供述「被害の原因は自分にもあるので弁償を求めるつもりはない」
・母親の供述「覚せい剤をやっているのではないかと思っていた」「娘ですので今回に限り身柄を引き受けたい」
・腕注射痕が認められることを明らかにした写真
・Mさんの供述「注射器で注射を打ってやった」

[乙号証より]
同意部分
・犯行状況
・Mさんとの関係について

2号証には署名押印がない
Jさん:「『カーッとなって火を点けた』というところが正確ではない気がする。弁護人と相談して決める」
故意について
Jさん:「家ごと燃やしてやるつもりはなかったが、布団に火を点ければ家に火が燃え移るとは思っていた」
別の供述もある
検察官:「家に燃え移ると思わなかったのか?」
Jさん:「カーッとなってやったのでそこまで考えなかった」


 検察官としては、署名押印していないとはいえ、取り調べ時に「カーッとなってやった」と述べているので、2号証は信用できると主張しているようです。
 私は、取り調べの一部分だけを示されても、話の流れというものがありますし、あまり説得力を感じませんでした。それに、「カーッと」という表現が曖昧すぎますので、何とも判断できませんでした。擬音は解釈が難しいです。

[弁証より]
・Mが書いた書類(嘆願書か?)
・情状証人 Jさんのお母様
・被告人質問 故意について


 弁護人立証は次回行われることになりました。
 ところが、弁護人が 論告弁論は日を改めて行いたい 旨を申し出ると、再び裁判長が「う〜ん」とうなりました。

裁判長:「また次となると4月半ばになってしまいます」

 私は、4月上旬が人事異動の季節であることに、ようやく気付きました。たぶん、裁判長としては、結審と判決だけを後任にバトンタッチすることが、どうにも気持ち悪かったのでしょう。

弁護人:「被告人質問での供述によっても変わってくるので、しっかりしたものを作りたい」

 弁護人も引きませんでした。裁判官は、「う〜ん」とうなり、頭をかきました。
 結局、弁護人の主張が認められて、論告弁論は、4月半ばにずれ込みました。


 今回は、検察官立証だけでしたので、事件については触れないことにして、「供述調書」に焦点を当ててみます。

 さて、「調書に言ってないことが書いてある」、「警察や検察によって犯行のシナリオを脚色された」といったトラブルは、頻繁に起こります。私は、どうしてこんなことが起こるのか、いつも疑問に思っていました。
 そこで、今回は、「なぜ供述調書にトラブルが絶えないのか」について調べてみました。

 まずは、「供述調書」で、google検索してみました。すると、意外なことに、トップに表示されたサイトに、実物の写しが掲載されていました。

「沖電気 湯布院 談合 経過」(「沖電気不当解雇撤回を闘う田中哲朗のページ」より)
http://www.okidentt.com/yuhuin/yuhuinkeika.html

 もう一つ、供述調書の例が掲載されている文献として、「法廷傍聴へ行こう」(井上薫 著、法学書院 発行)があります。私の手元にある[第三版](2002年7月30日)では、60〜62ページにかけて、リアルな例が掲載されています。

※11月15日追記: 上記の文献では調書の形式のみ見ることができます。内容に踏み込んだものとしては、つい最近読んだ本で、供述調書について触れられたものがありました。ちょっと難しいのですが、心理学者の著者によって、大変興味深い考察がなされていました。
「証言の心理学」[中公新書](高木光太郎 著、中央公論新社 発行)

 また、上記以外にも、インターネット上などを探せば、様々な供述調書を見ることができます。それが、どういうわけか、判で押したように、ていねいな標準語で、延々と話し続けているのです。もしかして、取調中は、被疑者は方言を禁じられていて、捜査官は口を出さないようにしているのでしょうか。

 そんなことはあり得ないと思います。ドラマのはぐれ刑事だって、なだめたり、叱ったりしながら、自白を説得しているのです。現実には、話が逸れたり冗談を言い合ったりしながら、もっとグダグダーっと行われているはずです。
 これに関して、どの資料を頼るべきか悩みましたが、ここに訪問して下さる皆様の便宜を考えて、次の書籍を参照することに決めました。

 まず警察で作成される供述調書というのは、取り調べのやりとりをそのまま問答の形で記載したものではなく、警察が容疑者の話をつなげて、一つの物語を最初から最後まで容疑者が一人で話したような形にまとめてしまうものなのです。(135ページ)

「ある日突然、警察に呼び出されたら、どうする・どうなる」(石原豊昭+國部徹 著、明日香出版社 発行)より


 ということは、供述調書というものは、取り調べのやりとりを捜査官がまとめたもの、ということになります。
 これは、目からウロコと言うべきか、今まで気付かなかった自分がマヌケなのか、ずっと抱いていた疑問に対して、「なるほど〜」と納得できる答えでした。

 以下、私が、架空の取り調べを作文し、それを元に供述調書を作ってみます。分かりやすくするために、方言を多用し、無駄なやりとりを含めます。
 実際とは大きく異なるとは思いますが、取り調べについて知りませんし、あくまでも架空のものですから、おかしな点についてはご了承下さい。また、方言はデタラメです。

(ここから)―――――――――――――――――――――――――――――――――
捜査官:「あんたねー、覚せい剤だけどよー、ほんとに初めてなの? 手慣れとるようにしか見えんがね。このままウソついとると実刑だでね」
被疑者:「そげん言われたって、今までマジメに働いとったけー、なんも悪いことしちょらんよ」
捜査官:「たわけたこと言っとったらいかんがや。ほんだら何でこの暑い時期に長袖着とるの? ちょっと腕まくってみやー」(被疑者の腕をとる)
被疑者:「やーめーて、やーめーて、もー! やーめーて!」(抵抗する)
捜査官:「こらっ!(軽く頭を叩く) ちょっと、動くじゃにゃあ!(押さえつける)…………、ほれごらん、おみゃあさんの腕は注射の痕で紫色だがね」
被疑者:「……」
捜査官:「あんたはなんでそんなウソついてまったの?」
被疑者:「そりゃ、仕方なか。前に大麻見つかって、かあちゃんに『今度やったら離婚やけ』言われとったけー、せめて初めてじゃ言うといたら、許してくれると思うたんよ。出頭の時に『これが初めてじゃ』言うてしもうたけー」
捜査官:「そんなに大事な奥さんだったらよ、なおのこと裏切ったらかんでしょー?」
(ここまで)―――――――――――――――――――――――――――――――――

 この作文を元に、捜査官になったつもりで、さらに供述調書を作文してみます。

(ここから)―――――――――――――――――――――――――――――――――
 私は、逮捕直後に、
  これが初めてです
と供述しておりました。
 これについて、悪いこととは分かっておりましたが、以前、妻に、大麻を見つかった時、
  今度やったら離婚します
と宣告されていたため、初めてだと言えば妻が許してくれると思い、虚偽の説明をしてしまいました。
(ここまで)―――――――――――――――――――――――――――――――――

 私は、捜査官が被疑者の袖をまくった件については、自白の強要とは言えないものですが、暴力と判断されるとマズイので、調書には使いませんでした。冒頭の、「このままウソついとると実刑だでね」も、時と場合によっては問題がありそうです。
 捜査官は、供述調書に記す内容を、都合良く判断できるのです。
 また、一つの物語風にまとめることで、事件をドラマティックに脚色することができます。もしかしたら、「せめて初めてじゃ言うといたら、許してくれると思うたんよ」には、たいして意味はなかったかもしれません。物語風にまとめたことで、離婚が怖くてウソを言ったという、一連の流れが出来上がります。
 ここでは、「かあちゃんに『今度やったら離婚やけ』言われとったけー」を、「『今度やったら離婚します』と宣告されていたため」と変えました。「離婚やけ」を「離婚します」に、「言われとったけー」を「宣告」に、それぞれ置き換えました。「離婚やけ」は甘えているようにも受け取れますが、「離婚します」では固い決意のように思えてきます。「宣告」は「離婚宣告」のように思えてきます。
 もしかしたら、奥さんは腹立ちまぎれに言ってしまっただけかもしれません。被疑者は、離婚したくなかったのではなくて、機嫌を損ねるのが怖かっただけかもしれません。微妙なニュアンスですが、被告人にとっては、数少ない有利な事情となるかどうか、重要な部分です。
 さらに、「初めてだと言えば妻が許してくれると思い」という、言ってもいない標準語のフレーズは、裁判では繰り返し引用されると思います。

 つまり、伝言ゲームのように、被疑者(もしくは被告人)の言葉が、供述調書では変化してしまうのだと思います。これでは、後になって、「調書に言ってないことが書いてある」というトラブルが起きても不思議ではありません。

 では、どうして被告人は、言ってもいないことが書いてある調書に、署名押印してしまうのでしょうか?
多くは警察官が一気に調書の全文を読み上げて、これで間違いがないかと尋ねるだけです。容疑者のほうでは、自分ではそんなことを言っていないと思っても、長い取り調べて疲れていたり、いちいち指摘するほどの重要な問題ではないと軽く考えてしまい(法律的には素人ですから)、とんでもない内容の調書にそのまま署名してしまったりすることがよく起こります。(135〜136ページ)

「ある日突然、警察に呼び出されたら、どうする・どうなる」(石原豊昭+國部徹 著、明日香出版社 発行)より

 確かに、長い取り調べに疲れて、「早く休みたい、早く帰りたい」と思っているところに、長い長い供述調書を読み聞かされるわけですから、面倒になって署名押印してしまう可能性は低くないと思います。

 実際、取り調べ云々以前に、かなり待たされることがあるようです。
 逮捕、勾留生活が綴られた「タイ〜ホ日記」によりますと、取り調べ時に、被疑者(もしくは被告人)が、ずいぶんと待たされた旨が記されています。
検察庁には、朝の10時頃には着いていたのだが、俺は順番が来たのは14時過ぎでした。

「検察庁へ送致」(「タイ〜ホ日記」より)
http://iceman.blog.shinobi.jp/Date/20060929/1/
再度検察庁に戻り、他の人が終わるまで待つ。
18時頃になり「帰るぞ」と声をかけられて起きた。

19時頃に●●署に戻ってきた。

 このエントリーによりますと、まず、10:00〜14:00まで、待機獄にて4時間待ちます。次に、手錠腰縄をつけた状態で、検事の部屋へと移動します。パイプイスに座り、手錠をパイプ椅子につながれます。その後、取り調べを受けます。
 さらに、裁判所へと移動して、手続と説明を受け、再度検察庁へと戻り、18:00まで待機獄にて待つことになります。

 余談ですが、検察庁で取り調べにあたる人は、我々にはみんな「検事さん」に見えますが、正確には、検事のほかに、検察事務官、副検事、といった方々が担当されているようです。たぶん、我々が裁判で証言する際には、「検事さん」と言ってかまわないと思います。ただし、裁判官の指示があったら、素直に従っておきましょう。

 本題に戻ります。
 どうやら、取り調べを受ける時には、かなりの忍耐強さが必要なようです。
 たぶん、捜査官が意図的に待たせたのではなくて、どうしても時間がかかってしまうものなのでしょう。処理しなければならない事件はたくさんありますから。
 でも、これだけ待たされただけでも、署名押印して早く帰りたくなってしまいます。

 ということは、強引な取り調べが行われなかったとしても、「調書に言ってないことが書いてある」などという、供述調書に関するトラブルが起こりうると考えられます。しかも、後から否定しても、「供述が変遷している」として、不利な判断を下されてしまうかもしれません。

 まだ、被告人の情状が悪くなるだけであれば、大きな影響はないかもしれません。

 もっと気になるのは(冤罪は問題外として)、被害者や目撃者の供述がゆがめられてしまうことはないのか、という点です。後から訂正しようにも、証人尋問で調書と違うことを言い出すと、「あの証人は信用できない」と判断されてしまうかもしれません。これでは、勇気を出して証言台に立ったのに、加害者に有利な証拠を提供してしまうという、全くもって不本意な結果になってしまいます。

 では、取り調べのやりとりをそのまま記録して、証拠として提出したら、うまくいくのでしょうか?
 私は、あまりうまくいかないと思います。なぜなら、長すぎるからです。裁判官は、方言だらけで分かりづらい調書の中から、無駄話を取り除き、証拠となる部分を探して、取り調べなければなりません。相当にしんどい作業です。
 私なら、すぐ嫌になって、「要点だけまとめてくれよ」と、要求すると思います。

 つまり、供述調書には、要点だけがまとめてある、という良い点があるのでしょう。
 それでも、要点だけまとめるのであれば、それなりの作法が必要だと思います。偉そうな物言いで、誠に恐縮なのですが、以下に挙げます。

1.捜査官が、本人の供述を元に、要点だけまとめたものであることを記す。本人が直接話したことではない旨を記す。
2.出所を明示して、いつでも参照できるようにしておく。

 1は、いつ、誰が、何のために、どのようにして、作成した書類なのか、正確な情報を明記しておくということです。例えば、「警察官のヤスウラが、平成19年5月3日13:35〜15:00、港警察署において、被疑者であるハマダを取り調べ、供述を元に、要点をまとめたものである」というような具合です。

 2は、取り調べの様子を記録しておいて、どの供述を元にして作文したのか、その箇所を記しておきます。ビデオ録画であれば日時、書面であればページ&行です。

 これによって、「調書に言ってないことが書いてある」としても、取り調べの記録を参照すれば、どちらがウソを言っているのか一目瞭然です。本当に供述の変遷があったのか、捜査のどの時点でどのようにして変遷したのか、後から調べることができます。より正確性の高い比較が可能です。少なくとも、警察官の証人を呼んで「調書が正しい」と言わせるよりは、客観的な証拠になると思います。

 今回の裁判で、検察官は、署名押印のない乙2号証について、取り調べのやりとりを一部分だけ読み上げました。私は、この部分だけではなくて、前後の話の流れや、取り調べ全体から見た供述の変化について、詳しく知りたいと思いました。そうすることで、被告人の真意を、より正確に知ることができます。これは、上記の方法で可能となるでしょう。

 もちろん、捜査も裁判も、人間が行うことですから、うまくいかないのは当たり前です。それでも、できる限り正確な判断が下されるよう、皆で努力していく必要があります。

 現在行われているような供述調書の書き方では、裁判で捜査段階での供述を正確に調べることができませんから、合理的ではないと思います。このような習慣を続けるメリットは少ないとしか思えません。

ただし、最近話題になっている、「取り調べの可視化」については、慎重論があるのも事実です。長勢甚遠(ながせじんえん)法務大臣は、3月9日付の記者会見において、志布志事件に関する質疑で、以下のように述べています。
Q:この事件と併せて,先般,富山で冤罪事件が発覚したことなどを含めて,いわゆる取調べの可視化を求める声が大きくなってくると思いますけれども,取調べの可視化論については,大臣,どのようにお考えでしょうか。

A:取調べの可視化は,前々から議論のあるところです。ただ,こういう事件があったからということよりも,刑事手続全体の中で,可視化がいいとか悪いとかだけでなく,事件の真相というものをきちんと究明するという観点から議論されることだろうと思います。可視化だけというと,全体の捜査手続,あるいは裁判手続の中での位置付けというのは,どういうことになるかと思います。後はその可視化そのものについても,プライバシーの問題があったり,逆にいろいろ真相を解明しにくくなるケースも起こり得るなど議論があるところですし,そういうマイナス面をなくし,そして全体として,どういうふうな捜査手続を認めていくことがいいのかと思います。どうしても日本はアメリカなどと比べて,例えば,司法取引だとか,おとり捜査だとか,あるいは通信傍受だとかという捜査手段が認められていないという意味で,大変限定的ですので,現実には自白に依存する傾向があると思います。そういうことがいろいろとまた問題を起こしていると言われているわけで,全体としての刑事手続の中で,どういうふうに考えるかということは,やはり法曹三者といいますか,専門家の中できちんと議論してもらいたいと思います。今,法曹三者での刑事手続の在り方等に関する協議会で,いろいろな観点の議論をしていますが,そこでもこれからの議論になっていくのだろうと思っています。

「大臣閣議後記者会見の概要」(「法務省」より)
http://www.moj.go.jp/SPEECH/POINT/sp070309-01.html


 どうやら、司法取引、おとり捜査、盗聴、盗撮等が、捜査機関に認められていないため、少々強引に自白を迫るのもやむを得ないという主張のようです。乱暴に言えば、少々脅そうが、ぶん殴ろうが、調書を大げさに書こうが、悪い人を有罪にするためには仕方がないということでしょう。
 つまり、捜査する側にしてみれば、取り調べの可視化が実現されると、厳しい取り調べができなくなってしまうため、有罪の証拠を見つけられなくなるという心配があるのでしょう。

 私は、冤罪のニュースを聞くたび、「拷問のようなことをして自白を強要するとはけしからん!」などと、憤りを感じます。一方で、凶悪事件の被疑者が否認を続けているというニュースを聞くと、「拷問でも何でもやってはかせてしまえ!」などと、腹を立てたりもします。自分でもびっくりするぐらい矛盾しています。私だけが変なのか、これが庶民の感覚というものなのか、よくわからないのですが…。

 もしかしたら、多くの人にとって、カタギの冤罪がなくなることよりも、ヤクザが証拠不十分で不起訴になってしまうことのほうが、嫌なのかもしれません。そう考えると、長勢大臣の発言は、検察・警察の都合ばかりとは言えず、国民の意見も反映されている可能性があります。
 もちろん、冤罪は他人事だと思っているから言えるのであって、実際には冤罪によって人生をメチャクチャにされた方もおられますので、疑わしきは罰せずという原則は大事にしなければなりません。その上で妥当な方法を選択する必要があります。

 取り調べの可視化を実現するためには、司法取引、おとり捜査、盗聴、盗撮を、検察と警察に許さなければならない。
 司法取引、おとり捜査、盗聴、盗撮が嫌なら、取り調べの可視化は諦めなければならない。
 もしくは、犯罪者を今よりも多く見逃してもいいから、冤罪だけは防ぐという選択をするのか。
 それとも、多少の冤罪は出てもいいから、今まで通り犯罪者を見逃さない方法を維持するのか。

 どうしたら良いのか…、私にはちょっと分からないですね。今後、両立できるアイデアが生まれることを期待しております。思い切ってどれかやってみたら、案外うまくいくかもしれませんし。

 とはいえ、私が提案した供述調書の改善案は、微妙な違いによる「言った」「言わない」のトラブルをなくして、無駄な争いを防ごうという目的でした。ですから、取り調べのビデオ録画を行わなくとも、取り調べの様子を後から参照できる状態にしておけば、それで十分なのです。書面で残しても機能すると思います。
 もちろん、冤罪は防げませんので、その方法を別途考える必要はありますが…。

 では、どうしたら、供述調書の書き方を、変えてもらえるのでしょうか。署名を集めて、政治家や法務省、警察庁、検察庁に、お願いすれば良いのでしょうか。

 私は、放っておけば良いと思っています。
 なぜなら、もうすぐ裁判員制度が始まるので、多くの人々が供述調書を実際に目にするからです。「言った」「言わない」の争いを、自らの頭で判断する必要に迫られるのです。供述調書がどうあるべきか、それを元に判断する立場となった裁判員としての国民が、実りある議論をすると思います。きっと、私のつまらない改善案よりも、よっぽど有益なアイデアが出てくるでしょう。
 私は、その時こそ、供述調書のあり方に、国民自らが決着をつけるのではないかと、大きな期待を寄せております。

◎今回分かったこと
・放火がいたずらばかりとは限りません。
・供述調書は、捜査官が、本人の供述を元に、物語を作文したものです。
・取り調べの前後に長時間待たされることがあります。
・裁判員に選ばれたら供述調書に注目して下さい。

参考文献:
沖電気不当解雇撤回を闘う田中哲朗のページ
http://www.din.or.jp/~okidentt
タイ〜ホ日記
http://iceman.blog.shinobi.jp/
法務省
http://www.moj.go.jp/
「ある日突然、警察に呼び出されたら、どうする・どうなる」(石原豊昭+國部徹 著、明日香出版社 発行)
「法廷傍聴へ行こう」(井上薫 著、法学書院 発行)
「常識としての刑法」(板倉宏 著、ナツメ社 発行)

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この記事へのコメント
はじめまして。
楽しくブログを拝見させていただいております。

取調べの可視化、確かに難しい問題ですね。

欧米の警察・検察と比較してみると、日本の警察・検察には司法取引等の手段が認められていないだけではなく、被告人の「故意」を精密に立証しなければならないというハンデがあるもよう。

殺人事件を例にみると、欧米の刑法では殺害の外形的事実を立証すれば足りるのに対し、日本の刑法では人を始めから殺すつもりで殺したという故意(動機等を含む)の立証まで必要になるため、どうしても「自白」確保が重要になってしまうようですね。

取調べの可視化が実現すると、その「自白」を警察・検察がどのように引き出しているかが明らかになって被疑者側に対策をとられてしまうこともあり、現場の警察・検察は消極的なんだと思います。
Posted by トゲゾー at 2007年05月26日 19:07
トゲゾーさん、コメントありがとうございます。
それは知りませんでした。補足に感謝いたします。

そうなりますと、どうしても自白が必要になるのでしょうね。
「故意」に関しては、色々思うことがありまして、別の機会で簡単に触れるつもりです。

今回は、大それたテーマを掲げてしまい、とても苦労しました。供述調書のトラブルが多いので、どうしても一度取り上げておきたかったのと、とにかく皆様に興味を持っていただこうと思いました。

それで、取り調べのやりとりを書面で記録すれば、一時資料として活用できますし、ビデオに比べるとごまかしが利くので、実現されやすいかなあと思いました。
ところが、先日、「現場の捜査実務」[立花書房 発行](だったと記憶しております)を立ち読みしたところ、

問答形式で調書を書く場合、質問が多くて被疑者が「はい」とだけ解答していると、誘導尋問のように見えるから避けるように

という旨が述べられていました。
こういう手法が確立されているのですから、取り調べの模様を書面にそのまま記録してもらうという方法は、効果的ではないと思いました。やはり、私のアイデアは、役に立たないようです。

こういう問題は、いくら考えても答えが出ませんので、新聞の社説にでも任せておいて、むやみに取り上げない方が良さそうですね。

今後は、大それたテーマは必要最低限にして、万引きする前に親を頼ろうというような、所帯染みた話をしていこうと思います。そのほうが、私には向いているでしょうし、良い記事になります。
それでも、色々なことを知りましたし、トゲゾーさんに教えていただく機会も得られましたので、書いて良かったと思っております。

今後とも、このような場末のブログでよろしければ、よろしくお願いします。
Posted by 絶坊主 at 2007年05月27日 10:52
絶坊主さん

先日、名古屋へ乗り込んだときは、どうもありがとうございました。ちょうど梅雨入りの日で、男同士の相合い傘になりまして、こちらは失礼しました。

旧名古屋控訴院には、戦前の法廷レプリカとか、貴重な判決資料も展示してあって、すごく面白かったです。名古屋地裁では、ひさびさに民事裁判も傍聴しましたし。手羽先もうまかったです。

さて、

> 裁判を進めるにあたって、『家屋の焼損を認識』していないと、大きな問題があるのでしょうか。

じつは、大きな問題があるのです。家屋の焼損を認識していることも、建造物放火罪の故意に含まれます。放火の罪が成立するかどうかの分かれ目です。だから、裁判長もこだわっておられるのです。

それを認識していなければ、「“器物損壊”のつもりで布団を燃やしたんだけど、結果として家が燃えちゃった」ということで、過失で家屋に飛び火して、公共の危険を生じさせたという「失火罪」or「重過失失火罪」になりえます。

失火なら罰金で済みますので、担当の弁護人としては、「焼損の認識なし」を主張して、失火の成立を狙いたいところですね。

ただ、焼損の認識は「未必的」なものでいいので、「家に燃え移ったらヤバいとは感じたが、それはそれで別に構わないかな」と思っていたなら、それは焼損の認識アリ→放火の故意アリ…という理屈になります。

 

また、放火の故意のあるなしを、被告人の「自白」に頼ってしまうのは、あまりにも危険です。自白をさせられるのは、取調室という一種異様な空間においてですから。

この発想がまかりとおっている間は、「事件に何の関係もない人を刑務所にぶちこむ」暴挙は、相変わらず続いていくでしょうね。

もっと物的な証拠や第三者の証言も寄せ集めて、総合的に検討するようにしないと、あんまり理性的な裁判とはいえないでしょう。

以上、いちおう過去に弁護士を目指していた人間のつぶやきでした。
Posted by みそしる at 2007年06月19日 21:22
すみません。補足です!!

もっとも本件では、布団に「灯油をまいている」という客観的事実から、「家屋焼損の認識あり」と認定するほうが、むしろ自然な流れでしょうね。

そこで、弁護人としては、「本件の供述調書(乙号証の前半)は、でたらめだ」ということで、それらの無効化を狙っているのでしょう。

ただ、警察や検察がつくった供述調書については、刑事訴訟法で証拠力が手厚く保護されています。特に、調書に書いてあることを公判廷で被告人が否定しようとする場合は、調書の内容を重視する方向で扱われます。

この取り扱いは「プロの捜査官が書いたことなんだから、間違いないんじゃねえの?」という価値観に基づいています。弁護人が、その壁を突き崩すのは容易ではない、というより非常に困難でしょうね。
Posted by みそしる at 2007年06月19日 21:50
みそしるさん、先日はありがとうございました。

たいしたおもてなしもできませんでしたが、楽しんでいただけて何よりです。

みそしるさんは、頭の回転が速いのか、次から次へと面白いことを話してくださいました。しかし、私は、どんなに頑張っても、つまらない話しか出てこないんですね(^_^;)
ホームズと話すときのワトソン博士はこういう気持ちだったのかと思いました。

次回はゆっくりお越し下さい。田県神社に行きましょう。私も機会がありましたら東京へ乗り込みます。

さて、「家屋の損傷を認識」の件ですが、実は、後で調べて書くための前フリをしたつもりが、今の今まですっかり忘れておりました。私の単純ミスです。失礼しました。
大変分かりやすく教えていただき助かりました。調べる手間がはぶけました。

この裁判を見てて思った主な疑問は、

イタズラではなくて家主が許していても放火罪の責任をとらせるべきか否か、
本人の供述だけで故意を判断できるのか否か、

です。

前者は、近隣住民を危険にさらしたという意味から、有罪も仕方がないだろうと思います。ただ、ある程度の減軽はされてもいいと思います。
というか、炎が大きくならなければ、自分たちで消火できて、事件にならなかったと思います。たぶん、運命の分かれ道は、そこだったのでしょう。

後者は、みそしるさんのおっしゃる通りだと思います。

>もっとも本件では、布団に「灯油をまいている」という客観的事実から、「家屋焼損の認識あり」と認定するほうが、むしろ自然な流れでしょうね。

もし、現住建造物等放火罪で有罪とするならば、本人の供述だけではなくて、客観的な事実と付き合わせて、判断するほうが良いでしょうね。
個人的には、本人の意志よりも、客観的事実の方を重視してもらいたいぐらいです。

別に警察の横暴とか言って批難するつもりはないのですが、「結果論だから結果論だから」という説得について、どういう意図でどういう説得がなされたのか、単純に興味があります。

取り調べの模様が載っている文献を探してみようかと思います。

知ってどうするのと問われると、ちょっと困りますけどね。そういうことは知ってから考えます。
Posted by 絶坊主 at 2007年06月21日 00:24
私の話、面白かったですか? 「その場の思いつきで、しょーもないことを一方的にしゃべっとったなぁ…」と、新幹線の中で反省してましたので、ひとまず安心しました。ありがとうございます。

火を放つことについて、家主の許可があった場合にはどうなるか、という点ですが、その場合は誰も住んでいない空き家に放火したのと同じと見て、「非現住」建造物放火罪になります。罪名が変わって、法定刑そのものが軽くなるのです。

近隣住民に対して危険なのには違いありませんから、やはり放火は放火です。

ちなみに、非現住建造物放火には2種類あって、他人所有の場合(刑法109条1項)と、自己所有の場合(同2項)があります。家主が放火に同意している場合は、自己所有のほうになるというのが通説です。

自己所有の非現住建造物放火は、「公共の危険を生じなかったときは、罰しない」ということになってます。なので、河原や岩盤、小島などの上にポツンと建っているような家など、まず近隣への危険が生じないと認められる例外的な場合は不可罰→無罪になります。
Posted by みそしる at 2007年06月24日 15:37
それと、話の展開が早いと思いました。いつもボーッとしている私には、なかなかついていくのが大変でした。

なるほど、たとえ隣家に燃え移らなくても、家主が許していても、「公共の危険」を生じさせただけで、間違いなく「放火」ということですね。よくわかりました。

やっぱり、みそしるさんに、法律の本を書いてもらいたいですねえ。なかなか分かりやすい法律本がありません。

ところで、論告、弁論を書いているのですが、私のメモが穴だらけなせいで、ぜんぜん進みません。記憶と以前の公判メモを参考に書いています。
ただでさえ更新が少ないのに、これではいつになるやら…。
もうちょっと頑張ってみて、ダメそうなら、後回しにするか、大幅に省略して、そのぶん判決言い渡しを頑張って書きます。
Posted by 絶坊主 at 2007年06月25日 00:30
誰からも何にも頼まれてないのに、勝手にいろいろなことを調べている点で、絶坊主さんは、私と似たニオイがいたしました。……ご迷惑かもしれませんが。

 
今の日本には無いですよね。犯罪と刑罰について解説した、一般向けの本。

絶坊主さんが本気なら、司法試験予備校のテキストを手元に置いても構わないと思います。伊藤真という人が弘文堂から出しているやつとか。あるいは専門書だと前田雅英教授の著作とか。

どちらも安価な本ではないですし、決して易しい内容ではありませんが、2色刷りだったり、レイアウトに工夫があったりするので、見やすくはあります。

総論と各論で分かれていたら、各論を選んでください。刑法総論は「法律界の数学」と呼ばれるほど難解で、ある意味で毒劇物に近いので、いきなり手を出すのはキケンです。

それでも、総論の最初の「犯罪とは何か」とか「犯罪の成立要件」みたいな項目には、目を通したほうがいいと思います。構成要件該当性とか違法性とか責任とか書いてあるところです。

すべての罪に共通するド基本の話ですので、いったんわかったら、特に争いのある刑事裁判で、弁護人が何が争おうとしているか、意味がスッキリ見えてくると思います。

ただ、裁判を傍聴していると刑法犯だけでなく「なんとか法違反」みたいな特別刑法犯も多いですよね。傍聴マニアにとっては、刑法と同じくらい知りたい話なのに、特別刑法の専門書は、悲しくなるほど数が少ないのが現状です。

ココだけの話、刑法と特別刑法を一緒くたにして、親しみやすくまとめる「犯罪事典」(今年中の刊行は無理そう…)を小学館さんから出すことになってますが、調べ物に着手してみて気づいたのが、「むちゃくちゃ面倒くさい!!」という事実です。

中途半端な知識しかない私が無理しなくても、こういう本を書ける優秀な人はたくさんいると思います。なのに、一般向けの犯罪事典が存在しない理由は、この「泣けてくるほどの面倒くささ」にあると確信しています。

絶坊主さん…… ちょっと手伝ってくれませーん?(半分本気)
Posted by みそしる at 2007年06月25日 18:59
今、軽く検索してみましたが、この方の説明は上手いかなと思います。(全部は読んでないですが)

「犯罪成立の3つの要件」
http://www.lufimia.net/sub/keiho1/1010.htm
Posted by みそしる at 2007年06月25日 19:29
<誰からも何にも頼まれてないのに、勝手にいろいろなことを調べている>ですか、そんなふうに考えたことはないです。
言われてみれば、確かに誰から頼まれたわけでもないですね(^_^;)
一つには、見栄っ張りというか、変な記事を書いて恥をかきたくない、というような気持ちがあります(>_<)

マジメに言いますと、イラン人の不法入国について書いたとき、ちょっと頑張って調べてみたら、それなりに対策なんかも思い付いて、自分としては面白い記事が書けた手応えがありました。
それ以来、裁判のやりとりより、吟味・考察部分が増大していきました。
誰も興味を示さない事件について一所懸命書いている姿は、はた目には面白いんじゃないかと、勝手に思い込んでいます。面白い奴だと思われたなら、記事も読んでいただけるでしょう。

あと、何か思い付くと、調べたい衝動に駆られることがあります。たいてい無駄なんですが、思わぬ収穫があったり、後で役に立つかもしれないので、時間と体力の許すかぎり調べることにしています。

それと、自分と同じような境遇(と思われる)の当事者もおられるので、いざというときのために調べています。裁判見ていると他人事じゃないって思うことが少なくないです。
似たような境遇の方が、検索でここにたどり着いたとき、お役に立てるように頑張りたいです。

教えていただいた本は安価ではないですね(T_T)
お金のあるときに、大型書店で立ち読みさせていただいて、検討してみます。
アマゾンの評価がほぼ満点だったので、買って損することはないと思いますが、念のため。

教えていただいたサイトは確かに読みやすいですね。分かりやすく手を尽くしてくださっています。例え話を上手に使うのは意外と難しいのでスゴイと思いました。

普段、普通に生活してて、刑法犯になることは、あまりありません。だけど、法に触れてしまうと、「知りませんでした」では済まないですからね。そうならないための知識はあったほうがいいと思います。悪意があってそういう知識を悪用するのは許し難いですが。

「犯罪事典」のお手伝いですか?
それほど面倒がかかるなら、なんとしても良い本にしなければいけませんね。
私にできることは限られてますが、やれることであれば、お手伝いします。また、メールか、テレビ出演のついでにでも、説明してくださいませ。
Posted by 絶坊主 at 2007年06月26日 21:05
たしかに刑法をお勉強していると、「なんでこの行為が処罰されないんだろう」という、法の抜け道くさい箇所がいくつかあります。

悪意がある人にとっては利用しがいがある知識かもしれませんが、それでも民事上の不法行為として損害賠償や慰謝料の対象にはなりえますし、むしろ「意外と抜け道は無いんだよ」ということを伝えられればと考えています。

絶坊主さんには、裁判官お言葉探しのお手伝いもお願いしてましたので、まずそちらの準備を進めないといけませんね。

今、集めたお言葉が集めっぱなしで、一部ダブっていたりで、ひとさまに引き継いでもらえるほどの形で整理できてませんので、もうしばらくお待ちください。

先日は、テレビ出演の寄り道みたいな訪れ方で、どうもすみませんでした。次はゆっくり名古屋を楽しみたいです。
Posted by みそしる at 2007年06月30日 12:35
おっしゃる通り、あまり法の抜け道はないのかもしれません。
裁判を見る限りでは、ほとんどが行き当たりばったりの犯行で、法の抜け道を悪用した犯罪は、あまり見たことがありません。よほどの“プロ”犯罪組織であれば別ですが。

お言葉集の整理のほう、お忙しいとは思いますが、よろしくお願いいたします。
読者の期待を裏切らないよう頑張りたいと思います。というか、まずはみそしるさんをガッカリさせないよう、頑張りますね。

またお会いできる日を楽しみにしております。
Posted by 絶坊主 at 2007年06月30日 19:51
>教えていただいたサイトは確かに読みやすいですね。分かりやすく手を尽くしてくださっています。例え話を上手に使うのは意外と難しいのでスゴイと思いました。

おほめのお言葉をいただき恐悦至極です。
各論サイドではなく総論サイドを引用されることって、実はなかなかないもんで、つい反応してしまいました。

>ただ、警察や検察がつくった供述調書については、刑事訴訟法で証拠力が手厚く保護されています。特に、調書に書いてあることを公判廷で被告人が否定しようとする場合は、調書の内容を重視する方向で扱われます。
>
>この取り扱いは「プロの捜査官が書いたことなんだから、間違いないんじゃねえの?」という価値観に基づいています。弁護人が、その壁を突き崩すのは容易ではない、というより非常に困難でしょうね。

この点については私は別の意見を持っています。
もともと刑事訴訟法322条は「証拠能力(刑事訴訟では有罪とするための証拠にできるか否かの問題におきかえていいでしょう。)」についての規定で、320条で伝聞証拠(反対尋問によるテストができない供述)を排除する、その例外として定められたものです。そして323条は確かに「法律上は正確に書けと命じているし、実際それを知っているプロが書いたんだから信じましょう」という意味合いがあるのですが、322条1項にはそのような要素は薄いと思います。322条1項は「不利益な事実の承認(及び同条但し書きにより「任意性あり」も要件となる)」か「特に信用すべき情況の下(業界用語で「特信情況」)」のどちらかが要求されますが、前者については、冷静になって考えると「この被告人、言うことがころころ変わるんだぜ」と検察官側が主張したい時に、その変わったという証拠になる書面を証拠として出せなかったら、これはどうしようもないですよね。まずは裁判官に見せてもいいよ(証拠能力が認められなければそもそも裁判官は見ることができないのが大原則)その結果書面を信じるか供述を信じるかどっちも信じないのか(どっちも信じるのか?(笑))……という証明力の問題については、それは他の証拠も含めて裁判官が自由に判断していいよ(318条自由心証主義)という仕組みは、これ自体は妥当な線だと思います。
実際絶坊主さんの傍聴メモが正しければ、任意性の確認をとってそれで即証拠採用しているあたり、322条1項前段書面(自己に不利益な陳述)としているでしょうし、(特信情況だったらもっと具体的な情況を説明させるし、おそらく取調官の証人尋問はするんじゃないかな。尋問後に採用というのが定石。)捜査段階で認めて公判で否定したのが、「捜査の不当」によるものなのか「公判時の悪あがき」なのか、裁判官がどう判断するかみものです。そして一律に「公判時の悪あがき」と判断してしまう裁判官は、一律に「捜査の不当」と判断してしまう裁判官と同じ程度に「だめ裁判官」だとは言えるでしょう。

>ところで、論告、弁論を書いているのですが、私のメモが穴だらけなせいで、ぜんぜん進みません。記憶と以前の公判メモを参考に書いています。

もうお気づきみたいですが、刑事事件の多くは一定の範囲内の犯罪ですし、当然のように論告も弁論も一定のパターンがあります。そのパターンを前もって書いてあるメモ用紙を作っておくことでだいぶ楽になると思われます。
Posted by 佐々木将人 at 2007年07月01日 01:27
佐々木将人さん、コメントありがとうございます。

分かりやすい説明でした。私ごときが言うのは余計なお世話ですが、もう少し改行を増やしていただけると、見栄えが良くなって、素人にも読みやすくなると思います。

>冷静になって考えると「この被告人、言うことがころころ変わるんだぜ」と検察官側が主張したい時に、その変わったという証拠になる書面を証拠として出せなかったら、これはどうしようもないですよね。まずは裁判官に見せてもいいよ(証拠能力が認められなければそもそも裁判官は見ることができないのが大原則)その結果書面を信じるか供述を信じるかどっちも信じないのか(どっちも信じるのか?(笑))……という証明力の問題については、それは他の証拠も含めて裁判官が自由に判断していいよ(318条自由心証主義)という仕組みは、これ自体は妥当な線だと思います。

大変よく分かりました。確かに、裁判官は、証拠を見なければ、判断のしようがないですね。
私は刑事訴訟法はよく分かっておりませんので、もう少し勉強してみます。

>もうお気づきみたいですが、刑事事件の多くは一定の範囲内の犯罪ですし、当然のように論告も弁論も一定のパターンがあります。そのパターンを前もって書いてあるメモ用紙を作っておくことでだいぶ楽になると思われます。

なるほど。それは思い付きませんでした。ありがとうございます。
特に論告はほぼ同じですので、何とか工夫してみようと思います。
Posted by 絶坊主 at 2007年07月01日 15:06
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