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2007年07月28日

些細なケンカだったはずが放火罪に…(4) 判決

 彼氏に覚せい剤を注射してもらった疑いで覚せい剤取締法違反、彼氏が撒いた灯油に火をつけた疑いで現住建造物等放火罪に、それぞれ問われていた被告人に対して、判決が言い渡されました。

初公判 http://chisai.seesaa.net/article/40521398
第2回公判 http://chisai.seesaa.net/article/43653796
第3回公判 http://chisai.seesaa.net/article/46546225

 検察官立証は初公判で、弁護人立証は第2回公判で、論告弁論は第3回公判で、終わっています。被告人が語る部分を読みたい方は、第2回公判へどうぞ。


【注意事項】
 この記事は、私が裁判傍聴で必死こいて書き殴ったメモを元に、なんとか記憶を辿って書いたものです。もしかしたら、実際に裁判で起こったことと、全然違うかもしれません。
 また、私に法律の知識はありません。
 偏った思いこみや思想が文章に紛れ込んでいるかもしれません。極力避けるように努力します。ご了承下さい。
 この記事が事件の真実を言い当てることなどございません。
 無いとは思いますが、無断転載はご遠慮下さい。引用は法律を守ってご自由にどうぞ。
 リンクはご自由にどうぞ。ただし、画像等への直リンクはおやめ下さい。
 登場人物のイニシャルは本名と無関係です。


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《些細なケンカだったはずが放火罪に…(4) 判決》
【現住建造物等放火】【覚せい剤取締法違反】『判決』
名古屋地方裁判所一宮支部1号法廷
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☆★登場人物★☆
Jさん(被告人。20代前半の女性。かなりの美人。終始うつむきながら泣いている)
Xさん(Jさんのお母様。40代ぐらいの女性)
弁護人(30〜40代ぐらいの男性。大柄でコワモテ。ジャーナリストの須田慎一郎さん風)
検察官(30代ぐらいの男性)
裁判長(30〜40代ぐらいの男性。羽生善治王将風のインテリ男子)
右陪席(30〜40代ぐらいの女性。三原じゅん子さん風)
左陪席(20〜30代ぐらいの男性。今までの公判と違う裁判官)
Mさん(Jさんの交際相手)


※ここからは、判決言い渡しですので、裁判長が述べたことを書きます。


主文 被告人を懲役3年に処す。未決勾留日数中、60日をその刑に算入する。その刑の執行を4年間猶予し、その間は保護観察に付す。


 裁判所が認めた罪となるべき事実は以下の通りです。
 被告人は、Mと共謀の上、M宅において、覚せい剤を含有するフェニルメチルアミノプロパンの水溶液を、Mから自己の身体に注射してもらって使用したものである。
 Mから足蹴にされたことなどに腹を立て、Mが「オレが火をつけてやる」などと言って灯油を撒いた後、**月**日午前9:00頃、家屋が焼損する事を認識していながら、布団のMによって撒かれた灯油が染みこんだ部分に火を点け、約4.4平方メートルを焼損したものである。

 補足として、弁護人が「被告人に放火の故意はなく無罪」を主張していたことについて、述べておきます。
 本件被害家屋は、木造であり、現場は和室で、畳の上にカーペットが敷かれていました。布団は、柱とふすまに接して敷かれていました。
 灯油は、Mが洗面器約2杯分を撒き、被告人が自ら洗面器約1杯分をかぶっており、布団には洗面器約3杯分の灯油が染みこんでいました。布団には、約50平方センチメートルの、灯油の染みができていました。
 被告人は、灯油の染みこんだ部分にライターで点火して、燃焼させました。
 被告人は、あえて染みになった部分に点火しており、灯油は一般的に燃料として使用されている事を考えれば、家屋の焼損を認識していたと判断できます。

 なお、被告人は、「灰皿の中で紙を燃やしたことぐらいしかない」、「たき火をした事がない」、「家まで燃えるとは思っていなかった」などと、放火の故意については否認していました。
 しかし、灯油を燃料に使った暖房器具を使用しており、自分で被って火をつけようとしたことなどから、被告人は灯油の危険を認識していたと考えられます。

 被告人は、刑事から「調書は結果論だから」と説得を受けたと主張していました。
 被告人には、捜査の段階から、弁護人がついていました。被告人は、警察から自白の強要はなかった旨を、述べています。
 自白の任意性を疑う証拠はなかったと判断します。

 未必の故意の成立についてですが、被告人は、火をつける時に「どうなってもよいと思った」と述べており、未必の故意が認められます。


 次に、情状についてです。
 放火は、交際相手から足蹴にされたことなどから犯行に及んでおり、身勝手な動機に酌量の余地はない。
 M宅の近隣住民に危険を及ぼした。消火が遅れればさらに重大な危険になっていた可能性がある。
 覚せい剤への親和性が認められる。Mとの交際を続けて再犯に及ぶ可能性がある。

 しかし、一方で被告人には有利な事情も認められます。
 近隣住民の119番通報によって、火事は消し止められたこと。
 家屋の焼失については反省の弁を述べていること。
 覚せい剤の使用についても反省の弁を述べていること。
 まだ若く、前科前歴がないこと。
 被告人の母が、被告人の覚せい剤の使用に気付かないなど能力に疑問もあるが、監督を約束していること。
 以上の理由から、今回は、保護観察を付けて、社会内処遇が相当と判断しました。


 保護観察が付きましたので、次は必ず実刑になります。
 覚せい剤は、一度でも使ったら、またズルズルとハマって抜けられなくなる。
 二度と使わないと約束して下さい。


 なお、この判決は有罪の判決です。判決に不服がある場合は、名古屋高等裁判所宛てに、今日を含めて14日以内に、控訴の申し立てをして下さい。

 以上で判決言い渡しを終わります。


※判決言い渡しはここまでで終わりです。

 判決言い渡しが終わるとみんなで礼をするのですが、それと同時に、被告人のお母様であるXさんが、「ありがとうございました!」と、大きな声で言いました。
 そう言えば、Xさんは証人尋問で、「私が生んで育てた子ですから、自分が裁かれてると思ってます」と、述べておられました。

 被告人のJさんは、礼が終わると、「わあああーーーーーん! わあああーーーーーん!」と大きな声をあげて、小さな子どものように泣き出しました。
 Xさんは、しばらくの間、直立したままで、号泣する娘を見つめていました。その後、しっかりした口調で、

「うちへ帰ろう!」

と短い言葉をかけました。

 考えてみますと、Jさんは、放火と覚せい剤が発覚し、逮捕されてから、5ヵ月近くも勾留され続けていました。
 彼女は、ヤクザと付き合い、覚せい剤を一緒に使い、挙げ句の果てには、大げんかの末、家に火をつけてしまいました。経緯だけを見れば、生活状況がよくない中で行われた凶悪犯罪で、実刑判決でもおかしくない事件でした。
 Jさんは、母親の短い言葉で、どんなに安心したことでしょう。
 Jさんには、このときの、お母様の愛情を忘れないでもらいたいです。短い言葉ですが、母親の愛情が詰まっていて、心から安心できたと思います。

 Jさんは、柵の内側から傍聴席側へ連れられて、「ありがとうございました!」と涙ながらに叫び、傍聴人出入り口から廊下へと去りました。
 こういう釈放は初めて見ました。
 名古屋市中区の名古屋地裁では、ご家族だけが廊下に出て、被告人はいったん奥の扉へと姿を消すことが多いです。ただし、即決裁判の被告人が、そのまま帰ったのを見たことがあります。
 裁判所や拘置所の都合か、被告人の状況によって、違ってくるのでしょうか。


 さて、今回の判決は、「懲役3年、保護観察付き執行猶予4年」です。
 ただし、「未決勾留日数中、60日をその刑に算入する」とありますので、拘置所に入っていた期間のうち60日だけ、すでに服役したことにして、懲役3年から差し引かれます。
 したがって、もし服役することになったら、2年10ヵ月の懲役ということになります。

 ところで、「保護観察」とは、どういった制度なのでしょうか。

 まずは、制度について知るために、「更生保護便覧'04」(法務省保護局 編集、更生保護法人 日本更生保護協会 発行)から、該当部分を引用してみます。
 保護観察とは、犯罪や非行をした人に、通常の社会生活を営ませながら、そのものに課された約束ごと、すなわち遵守事項を守るよう指導監督するとともに必要な補導援護を行うことによって、そのものの改善および更生を図ろうとするものである。

「更生保護便覧'04」(法務省保護局 編集、更生保護法人 日本更生保護協会 発行)より

 難しい言い回しでよく分かりませんが、どうやら保護観察を受ける者は、

「約束ごとを守り、お説教されたり助けてもらったりしながら、社会内で立ち直る」

ということのようです。

 Jさんの場合、4号観察と呼ばれ、「裁判所の判決により刑の執行を猶予され、保護観察に付された者」で、「判決確定の日から執行猶予期間が満了するまでの期間」、つまり執行猶予4年ですから、保護観察も4年間続きます。
 この4年間に約束ごとを破ってしまったら、3年間刑務所で過ごすことになるそうです。当たり前ですが、犯罪をしてしまったら、その犯罪の刑+懲役3年の間、刑務所に服役することになります。

 なお、孫引き(元のデータは平成15年の保護統計年報)ですが、ほとんどの保護観察対象者は1号観察で、「家庭裁判所の決定により、保護観察に付された者」、つまり少年なのだそうです。
 成人の保護観察対象者は、3号観察が若干多く、「地方更生保護委員会の決定により、仮出獄を許されている者」で、期間は「仮出獄の日から残刑期間が満了するまでの期間。なお、不定期刑については例外がある。無期刑仮出獄者は終身。ただし、判決時少年の無期刑仮出獄者については特例がある」となっています。
 たまに、「無期懲役だと20年ぐらいで出てくる」というような言説を聞きますが、仮に出てこられたとしても一生涯に渡って保護観察が付されます。ちなみに、具体的な人数は、「平成18年版 犯罪白書」(法務総合研究所 編)、第5章「更生保護」第1節「仮釈放」で確認できます。興味のある方はどうぞ。

 話を戻します。
 では、守らなければ刑務所に入れられてしまうという、その約束ごととは、いったい何なのでしょうか。再び「更生保護便覧'04」を見てみましょう。ここでは、4号観察に対して適用される遵守事項を引用します。4号観察だけは他とちょっと違います。
 四号観察については、住所を届け出ることのほかに、
@ 善行を保持すること。
A 住所を転居し、または一箇月以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長に届け出ること。

 どうやら、住所や旅行以外には、「善行を保持」していれば良いようです。逆に言えば、「居所を明確にしなかったり、悪さがバレたりすると、刑務所行き」、とも考えられます。

 しかし、罪を犯してしまった人にとって、いきなり「善行を保持」と言われても、なかなか簡単ではありません。
 そこで登場するのが、保護観察官と保護司です。
 指導監督および補導援護は、保護観察官が自ら又は保護司と協働して行っているが、その実施に当たっては、本人の改善更生にとって「必要かつ相当な限度において行う」べきものとされている。

 では、保護観察官と保護司は、具体的に何をしているのでしょうか。

 まずは指導監督について見ていきます。
〈指導監督〉
 指導監督は、保護観察に付されている者に、遵守事項を守らせるために行われる措置、作用をいう。その方法としては、犯罪者予防更正法第三十五条において、次の三項目が定められている。
@ 保護観察に付されている者と適当に接触を保ち、つねにその行状を見守ること。
A 保護観察に付されている者に対し、遵守事項を遵守させるため、必要かつ適切と認められる指示を与えること。
B その他本人が社会の順良な一員となるように必要な措置を採ること。
 指導監督には権力的、監督的な側面が見られるが、その運用は、相互理解と信頼関係の樹立に努め、これに基づいた本人の自発的参加を引き出す方向で行われる。

 どうやら、対象者と適度に面談して、約束ごとを守るように指示を出して、社会でうまくやっていけるように「必要な措置を採る」ということのようです。
 悪いことをしないかよく注意して見守る、必要があれば説教する、というような主旨なのでしょう。これは当然です。そのために保護観察に付したのですから。

 例えば、Jさんの場合、仕事をさぼってヤクザの男とデートしていたら、厳しく叱られるかもしれません。
 しかし、説教や指導というものは、一定の権威や、それなりの信頼関係がないと、効果はありません。「うるせえババアだなあ!」などと、反発を招き、かえって生活が荒れてしまうかもしれません。

 引用元の本でも指摘していますが、まずは何でも話せる信頼関係を作ることが大切です。保護観察の対象者、本件ではJさんが、「自ら積極的に、保護観察官、保護司を信頼し、気の許せる関係を築いていく」、ということが大切だと思います。

 次に、補導援護を見てみます。
〈補導援護〉
 補導援護は、指導監督に対してもう一方の側面、すなわち非権力的、福祉的、援助的な働き掛けであるということができる。犯罪者予防更正法の第三十六条には、補導援護の方法として次の七項目が定められている。
@ 教養訓練の手段を助けること。
A 医療及び保養を得ることを助けること。
B 宿所を得ることを助けること。
C 職業を補導し、就職を助けること。
D 環境を改善し、調整すること。
E 更生を遂げるために適切と思われる所への帰住を助けること。
F その他本人の更生を完成させるために必要な措置を採ること。
 補導援護の運用に当たっては、本人自らが改善更生に努めるよう援助することが大切である。必要以上の援護を行うことによって、本人の自主性を損なうことがないよう留意しなければならない。

 なるほど。
 叱るだけでは「善行を保持」させることはできないので、生活上の相談にのって、本人を更生に導くということなのでしょう。

 例えば、Jさんの場合、覚せい剤を使用していましたので、覚せい剤精神病や薬物依存症を発症しているかもしれません。その場合、保護観察官や保護司は、自ら気付いたり、本人からの相談を受けたりして、適切な病院を紹介するのかもしれません。

 ただし、この本では、必要以上の援護は本人の自主性を損なうとして、注意を喚起しています。
 保護観察の対象者、Jさんとしては、思うように動いてもらえず不信感を持つことがあるかもしれませんが、「自主性を損なうことがないよう留意」してくれていると理解して、安易に反発しないほうがいいでしょう。

 保護観察期間中、注意すべきことについては、制度を調べることで、ある程度分かりました。具体的には、それぞれ違いますので、身近な監督者(本件ならお母様)、保護観察官、保護司の指示に従うことが大切だと思います。

 でも、ちょっと待って下さい。
 もし、いつ頃再犯に及びやすいのか、あらかじめ分かっていたら、用心することができますよね。
 実は、ちょっと古いのですが、「平成7年版 犯罪白書」(法務総合研究所)に、覚せい剤事犯の保護観察について調べたデータがあるのです。

 これがどういうデータなのか、専門家とマニアのために、説明を引用しておきます。よく分からない方は読み飛ばして下さい。
第4節 覚せい剤事犯保護観察対象者に関する特別調査結果

1 特別調査の概要
 法務総合研究所では,覚せい剤事犯保護観察付き執行猶予者について,その特質と処遇の実情を明らかにするため,保護観察所の協力を得て,総合的な実態調査を行った。調査対象は,覚せい剤取締法違反の罪により保護観察付き執行猶予に処された者で,平成4年6月1日から同年9月30日までの4か月間に全国の保護観察所において新たに受理した322人(男子241人・女子81人)であり,これらの者について,科刑の内容,受理時における身上特性,覚せい剤事犯の態様,保護観察開始時の生活状況等を明らかにするとともに,保護観察開始後2年間の推移について詳細な追跡調査を行った。以下は,その内容である。

(中略)

イ 保護観察期間中における再犯の罪名及び再犯期間
 IV-33表は,保護観察期間中に公判請求された再犯者(74人・23.0%)について,再犯罪名及び再犯期間を見たものである。再犯罪名を見ると,覚せい剤取締法違反が59人(再犯罪名の79.7%)と圧倒的に多くなっている。再犯期間について見ると,保護観察開始後3月以内に再犯に至った者が28.4%を占めている。

「平成7年版 犯罪白書」(法務総合研究所)より

 では、その結果を見てみましょう。
 これは、「保護観察付き執行猶予判決が確定してから、保護観察期間中に、裁判沙汰になった事件を起こした人」について、調べたものです。

保護観察(期間)中の再犯期間別構成比
折れ線グラフ: 保護観察(期間)中の再犯期間別構成比

 まず、判決確定から3ヵ月以内に、再犯に及んだ人がたくさんいます。これはもう、常習犯と言われても言い訳できません。厳しい判決を言い渡されたことでしょう。
 悪い友達と縁を切れなかったのか、薬が欲しくてたまらなかったのか…。いずれにしても、長期間の服役で、とりあえず覚せい剤のない生活を手に入れることができたと思います。
 まず、最初の3ヶ月間は、再犯の危険が非常に高いことが分かります。よく用心して生活する必要があります。

 次のヤマ場は、9ヵ月〜1年後までです。グラフを見ると、大変特徴的な曲線で、覚せい剤取締法違反だけが急増しています。この期間は、覚せい剤を使う誘惑に負ける可能性が高いようです。
 このデータだけ見ても、理由はよく分からないですね。油断したのか、まじめな生活に飽きたのか、そろそろ薬が恋しくなるのか、実刑を喰らった悪い友達が出所してきたのか…。

 いずれにしても、判決確定から9ヵ月〜1年後頃、覚せい剤の再犯に注意する必要があります。そういう友達を避けましょう。嫌なことがあったら、ご家族か保護司にでも相談して下さい。薬物以外の方法で何とかしましょう。妄想や幻覚に困ったり、嫌なことをまぎらわすために薬物や酒を使ってしまったりしたら、医師の診察を受けましょう。

 最後のヤマ場は、判決確定から1年3ヵ月〜1年6ヵ月後です。ここでは、覚せい剤以外の犯罪だけが、急増しています。
 この理由はさっぱり分かりません。とにかく、この時期には、他の犯罪も含めて、広く注意を向ける必要があります。
 逆に言えば、この時期に悪いことをしなければ、更生がうまくいっている可能性は高いのでしょう。

※厳密に言うと、公判請求された(裁判沙汰になった)だけでは、有罪か無罪か(犯罪を行ったのか否か)不明です。しかし、未確認ですが、普通に考えて、無罪はほとんどないと思います。



 ところで、JさんとMさんの関係は、どうにも理解しがたいものがあります。少なくとも、Jさんの考え方は、理解しがたいと思います。具体的に挙げてみます。

1.暴力団員のMさんと交際していた。

2.「ヨリを戻したわけではないのに、彼氏でもないのに、何で蹴られなあかんの」
 彼氏だったら蹴られてもいいと思っている?

3.「(Mさんと)別れるとか、別れないとか、考える余裕がありません」
 Mさんは、暴力団員で、覚せい剤の入手先であり、一緒に使用しており、放火のきっかけとなったケンカの相手です。誰がどう考えても別れたほうがいいに決まっています。


 Jさんは、彼氏からの暴力を容認し、再犯の恐れが増すというのにヤクザとの交際をやめようとしません。普通に考えて、自ら不幸を招き入れているようで、自殺行為としか思えません。
 そもそも、交際相手がヤクザと分かった時点で、よっぽどの資産を持った大物でもない限り、普通は手を引くのではないでしょうか。ヤバイことに巻き込まれそうです。実際巻き込まれましたし。
 では、Jさんは、どうしてこんな行動をとるのでしょうか。世の中には、Jさんと似たような方がおられるのでしょうか?

 結論から言うと、Jさんと似たような方は、たくさんおられるようです。しかし、手記やインタビューなど、文献になっているものは、多くないようです。
 どうにか見つけ出した本は、世間からは忘れ去られ、図書館の棚で押しつぶされており、紙は茶色になっていました。
 なお、実名かどうか分からない名前がありましたので “A” と変更しておきました。著作権の侵害を目的とした行為ではございません。ご了承下さい。
 Aは不動産の他に仕事があるのだと言っていた。それが何なのか、最初のうちにはわからない、ただ恋するだけの私だったのだ。
 ある日、私は世田谷にあるAのアパートにいった。そこは1DKで狭いうえに、アイドルのポスターや車のステッカーがベタベタと張り付けられていた悪趣味とも言える部屋だった。
 それを眺めているうちに、一枚のカレンダーに目がくぎづけになった。そこには存在感と圧力感のある文字が浮き彫りになっている。まさかそんな……。それはある暴力団の名前だったのだ。
「Aくんって、もしかして組関係の人?」
 分かり切った質問だが、私は慎重に聞いた。否定されるはずがないのもわかっていたが、Aを好きになってしまった私は、否定の言葉が聞きたくて質問したのだ。
「不動産の仕事は、実は片手間なんだよ。自分の兄貴分が組とはまた別で、その仕事をしているわけ。それを少し手伝ってる。俺のね、本当の仕事は別にあるんだ。本当のしのぎはコレだよ、コレ」
 Aはそう言って、四角いテーブルのわきから小物入れを取り出した。それには小さな紙袋があり、その中に私の予想したものが入っていた。ビニール袋に入った白い粉と注射器に注射針。
 私の十代の最大の汚点だったあの思い出を蘇らせる魔の薬、覚醒剤が入っていたのである。

「娘の積木くずし」(穂積由香里 著、株式会社データハウス 発行)より

 この時点で、普通の人なら、付き合いをやめます。たとえ恋人でも、犯罪に荷担するような人なら、絶交します。いつか必ず面倒な犯罪に巻き込まれて、自分が痛い目を見ます。
 そもそも、この男性は、自らすすんで犯罪組織に加わっていますので、周囲に迷惑をかけても気にしない傾向があるかもしれません。いつか、それが自分に向けられて、例えば足蹴にされるようなことになるかもしれません。
 いずれにしても、普通の人の感覚なら、交際相手として、ありえない人物です。

 実際、その後、穂積さんは、犯罪に巻き込まれることになります。
 Aは毎日、毎日、覚醒剤を腕に注射し続ける。相当な中毒患者だった。
「おまえも打つか」
 Aから差し出されて、私はとまどった。二度と麻薬には手を出さないと、あれほど自分に誓ったのに…。けれど、私の体は麻薬の魅力を誰よりも知っている、そして、嘘のつけない体だった。
 まるで、意志に反して、体がそれを欲していたように、私はスッとそれに手を伸ばしてしまうのだ。そして、悪魔の液体を自分の腕に流し込んだ。
「ああ、やってしまった……」
 一瞬、後悔したが、それも覚醒剤の効果がすぐに現れたために消えてしまった。覚醒剤はシンナーのような幻覚剤の麻薬とは異なり、気分を爽快にしてやる気を起こさせる薬である。私は打った直後に、体内がスカーッとさわやかでハツラツとした気分になり、自分がしていることが悪いことなんてみじんも考えられなくなっていた。

 これは、覚せい剤の自己使用ですから、やってしまった穂積さん自身に責任があります。自業自得と言われても反論できないでしょう。
 しかし、このような人物と付き合っていると、他の厄介ごとに巻き込まれる可能性も高いようです。
 そんな地獄の日々を送っている時だった、Aが大崎警察から指名手配されたのは。私はその時、恋人への心配よりも、自分がこれで薬と縁が切れるかもしれないと思う気持ちのほうが大きかった。彼がいなければ、私は覚醒剤を手にすることはできないと思ったからである。
 反対に彼が捕まったら、私も捕まるのだという不安などまったくなかった。とにかくやめられたら、それでいいと……。
 ところがうまくはいかなかった。Aと同じ組員で、彼の友人であるKが私に近付いてきたのである。KもまたAと同じ常用者で、普段はAから買っていたのだが、Aが指名手配になったため、横浜の暴力団ルートから覚醒剤を手に入れようとしていたのである。
 その取引についに私は利用されてしまったのだ。私も薬が途切れることの不安が生まれて、喉から手が出るほどそれが欲しくてならなかった。だから、Kの誘いにのってしまったのだ。
(中略)
 この日の出町の一角で売買が行われる。Kが私に言う。
「ごめん。俺が出て行くとモロ、ヤクザってわかって目立つんだよ。代わりに行ってくれよ。頼むよ」
 最初から彼は私に取りに行かせるために連れてきたのだ。イヤな気がしたが、こうなったらやるしかない。私は現金を抱えて、売人に向かって歩いた。もちろん、パンチパーマの凄い形相のおじさんである。
「バカ、目立つように渡すんじゃねえよ」
 私が現金を渡そうとすると、相手は怒りながらそれをひったくるようにして受け取り、ビルの陰でビニール袋を出してくれた。
 不思議なもので、覚醒剤の中毒になりつつあった私は、そのわずかな重みに、恋人に出会えたかのような感激を覚えたのだ。「すぐにやりたい」と不覚にも思うのだ。

 穂積さんは、ヤクザの彼氏と付き合っていて、その仲間のヤクザに、利用されてしまったようです。彼女も、彼氏が指名手配されてしまい、覚せい剤が手に入らず、簡単に誘いに乗ってしまいました。その意味では、まだ、責任は本人にあると言えます。

 しかし、それだけではすまないこともあります。なんと、穂積さんは、彼氏が警察に嘘の供述をしたため、やってもいない罪で逮捕状を出されてしまったのです。
 私に覚醒剤を教えた男、A……。私は、短期間だったけど、彼のことを本気で好きだった。そのために覚醒剤にも染まったと言える。
 そして、彼が指名手配になっても、彼のことを心配していた。こうして私が逮捕されてからも、彼が逮捕されないことを祈るくらいだった。女なんてこんなものだ。
 それなのに……。あいつは……。
 六月下旬にAは大崎警察に逮捕されていた。その取り調べの中で、あいつは私の名前を出して、しかも「スピードを一万円で由香里に売った」と自供したらしいのだ。
 他人の証言がとれたら逮捕状が出される。私は、彼の証言から覚醒剤を買った容疑で逮捕状を出されてしまったのだ。
 まったくのデタラメだ。私は彼に覚醒剤を教えられ、彼の部屋で使用したことは認めるが、一度たりとも買ったことなどなかったのだ。
 彼だけではなかった。私の友人だったHまでもが、逮捕されたはらいせに、私に売ったと証言をしたという。

 恋をしている時には気付かないかもしれませんが、結局のところ、この男性の本性は、こんなものだったのかもしれません。
 厳しい立場に追い込まれた時、人間の本性が見えることがあります。その時になってから、交際相手の本性を知って愕然としても、後悔することしかできません。
 犯罪に関わっている人と付き合うと、犯罪に巻き込まれるだけでなく、裏切られる可能性もあるのかもしれません。

 では、それにもかかわらず、穂積さんが、この男性を好きになってしまった理由は、何なのでしょうか。彼女は、次のように、自らを分析しています。
 私は誰とでもすぐに打ち解け、すぐ友達になる。顔とかスタイルなんて関係ない。フィーリングが合えばその場でお友達。相手を好きになれるのだ。
 それとともに、離婚の傷を癒してくれる相手がほしかったのも事実。私は寂しかった。落ち着ける場所が欲しかった。
 だがAは実際、危険な匂いのする男だった。悲しいかな、私は「いけない、いけない」と心ではストップをかけながら、危険なものにひかれていってしまう。これが命とりなのだが…。
 私は男を見る目がない。自分でも本当にだめな男ばかり好きになって尽くしてしまう。また、そんな男を好きになってしまうのかもしれない。
 でも、悪いことさえしなければ、男に騙されるのもしかたがない。男に金目当てでたかって、騙すような悪賢い女より、その方が私には良い。それだけが、私の純粋な部分だと思うから……。

 では、穂積さんの自己分析をまとめてみます。

a.フィーリングが合うか合わないかで人を判断する。
b.「いけない」と思いながらも、危険なものにひかれてしまう。
c.ダメな男を好きになって尽くしてしまう。
d.騙すよりも騙される方が良いと思っている。


 これはJさんと似ている部分があるのではないでしょうか。先ほど述べた、Jさんの考え方と、比較してみます。

1.暴力団員のMさんと交際していた。
a.b.c.

2.「ヨリを戻したわけではないのに、彼氏でもないのに、何で蹴られなあかんの」
c.d.

3.「(Mさんと)別れるとか、別れないとか、考える余裕がありません」
b.c.


 穂積さんの分析が少し抽象的で、私のまとめ方も下手かもしれませんが、それを差し引いても似ているように思います。

 では、Jさんや穂積さんのような方が少なくないとしたら、どうすればいいのでしょうか?
 自立欠如と目される女性に対する処遇の処方箋の一つは、「自立を促す」である。女子の矯正施設で、私もやれば出来るという自信をつけさせるため、刑務作業の選択や居室の配置等の処遇がきめ細かく行われた例を見た。その結果、「無理と思っていた仕事が出来るようになった喜び、仕事で工夫して結果を出せた楽しさ」を目を輝かせて語る受刑者に何人も会った。自分の才覚で達成感を得る喜びを、刑務所で初めて経験したという人もいた。この体験をきっかけに、彼女達にとって新しい生き方である、自立・自活路線への道筋が開かれているのは、素晴らしいことだと思う。成人矯正施設という「他人頼みの甘え」を許さない環境も、自立志向を高めるという処遇方針と相性が良いようだ。

「女性保護観察対象者の処遇を考える」(執筆者: 横地環)
「罪と罰」[第44巻3号](財団法人日本刑事政策研究会 発行)より

 確かに、女性の被告人の中には、「あの人さえしっかりしてくれたら」、「これからは子どものために」などと、更生に対して「他人頼み」になっている方がおられます。まさに「自立欠如と目される女性」という表現がピッタリの被告人です。

 しかし、そんな女性のうち、刑務所で自信をつけ、新しい生き方が見えてくる方がおられるようです。これは素晴らしいことだと思います。矯正施設としての機能が最大限に発揮されています。
 その意味からすると、もし服役することになっても、「刑務所に行くなんて人生終わり」などと考える必要はなく、かえって自分のためになる可能性が高いと言えるでしょう。

 Jさんの場合、保護観察付き執行猶予ですから、社会内で「やれば出来るという自信」をつけて、自立した生き方を身につけていく必要があります。ある程度は、逃げずに自分の力で立ち向かって、「仕事で工夫して結果を」出さなければなりません。

 それは決して難しくはないと思います。たいていの職場では、いきなり難しい仕事を任されるわけではないので、慣れるまでは苦労しても、いずれ大きく成長する時がきます。
 さすがに、生活が立ち行かなくなったり、あまりにも辛くて毎日泣いて暮らすようなことがあったりしたら、雇用主、ご家族、保護司らに相談する必要があるでしょう。借金したり、仕事に行かなくなったりするぐらいなら、誰かを頼ったほうがいいと思います。
 しかし、基本的なことは自分でどうにかして、自信をつけたほうが良いようです。

 ただ、ずっと自立した女性として生活していくというのは、人によるとは思いますが、必ずしもうまくいくとは限らないようです。横地氏は次のように続けます。
 しかし、その後、社会復帰後の長い人生を自立と自活の喜びだけで支えきることができるだろうか。女性対象者一般にとってはかなり厳しい選択である。一般的に、女性の賃金は男性より低く、仕事で周囲から認められ尊敬される可能性も低い。女性対象者の多くは学歴・職歴という点でも不利である。そのような背景事情がある上に、女性対象者の多くは、「帰ったら、(家族等の)相手にとって良き人になり、一緒に生きていきたい」を社会復帰時の本望とする人達なのである。
(中略)
 少し前までは、女性の置かれた現実を反映し、保護観察処遇でも、「女は家族の世話ができれば、良い男を見つけさえすれば良い」という他力本願の女性像を想定せざるを得ない時代があったと思う。しかし、この旧来の処遇方針では、本人が家族や男の食い物にされる危険をいつまでも払拭できない。
 かたや、男性対象者にとっての標準仕様である「就労第一の自立モデル」をそっくり女性対象者に当てはめることには上述のような無理があり、女性の関係性志向の良い面(社会的孤立を回避できる)をもつぶしかねない。

 結局、この問題に明確な答えは出ておらず、自立と誰かに頼る生き方をバランス良く調整している、試行錯誤の途中であるようです。

 Jさんの場合は、まだ若いこともあって、周りの人々の協力が得られます。しばらくは、何もかも自力で頑張る必要はありません。時間稼ぎはできます。

 私は、仕事での成功を目指そうが、良い男を見つけて世話をしようが、どっちでもいいと思います。ただし、どういう生き方をするのか、ちゃんと自分の意志で決定して、その責任を持つ必要はあると思います。

 つまり、「私は事務職の正社員になってバリバリ稼ぐ」でも、「私は低所得でも良いからぐうたら寝て暮らす」でも、「私は頼りがいのある男を見つけてその人生を助ける」でも、何でもいいですので、自分で将来の計画を立て、そのためにできることを考え、最善の選択をするということです。

 そのためには、どんな資格が必要なのか、どんな男が必要なのか、どれぐらいのお金が必要なのか、それとも必要ないのか、自分の計画によって違います。

 そして、失敗したら、他人のせいにしないで、自分の行動を見直し、必要であれば社会的な責任をとります。
 再出発の時も、「あの人さえしっかりしてくれたら」とか、「これからは子どものために」とか、他人のことばかり言わないで、自分の人生をどうしていくのか、再び計画を立て直します。ここで、今までの生き方を反省し、分析し、何がいけなかったのか考えます。それが、生き方を変えるということであり、人間的に成長するということです。

 もちろん、夫がいれば家庭について半分の責任がありますし、子どもがいれば「子どものため」に努力するのは当たり前です。しかし、そればかりにとらわれて、具体的に自分がどうしていきたいのか、何がいけなかったのか分析できていないと、何も変わりません。
 それはただ単に、自分の失敗を、「あの人さえ」や、「子どものために」というような、美しい言葉でごまかしているだけです。そんなことで反省したつもりになっていては何も変わりません。人のために頑張れば必ずうまくいくわけではありません。動機付けとしては立派ですが、具体的な手段がなければ、同じ失敗を繰り返し続けます。

 では、どうしたら、同じ失敗を繰り返さないだけの、反省、分析ができるのでしょうか?
 私は、「フィーリング」だけで判断しないで、冷静に状況を見極め、どの選択肢が最善なのか選ぶと良いと思います。そのためには、ただ何となく考えるだけでは難しいので、それなりの方法を用いると楽にできます。

 ここでは、私が以前勤めていた会社で学んだ、会議の方法を使ってみることにします。実際には、大勢で話し合うための方法ですが、一人で考える場合にも応用できます。
あいまいな記憶を頼りに自己流でやってみました。あくまでも例ですので、参考程度にしていただき、正確なやり方を学びたい方は、専門書をお読み下さい。
 また、例の内容は、事実と異なります。私が、公判で見聞きしたことをもとに、想像力を膨らませながら、好き勝手に考え出したものです。嘘八百であり、やり方を説明するために、それらしく書いているだけです。ご注意下さい。


1.目標を決める
「仕事しながら、■■■■の資格を取得する」

 ここでは、被告人質問でのJさんが述べた、「■■■■が好きなので、仕事しながら、資格取って頑張りたいです」をもとに、上記の通り決めました。
 なお、■■■■は、聞き取れませんでした。ここでは、この部分は伏せ字のまま、公判でのやりとりをもとに、それらしく作ってみます。


2.目標実現のために必要なことを書き出す
例)
・勉強する時間
・試験を受ける費用
・参考書の代金

 目標が決まったら、そのために必要なことを、思い付く限りひねり出して、紙に書き出します。もちろん、携帯電話のメモ帳機能や、パソコンを使っても良いと思います。たくさん書いて保存できるものであれば問題ないでしょう。
 ここで重要なのは、バカバカしいアイデアでも、恥ずかしがらずに書き出すことです。むしろ、楽しみながらバカげたアイデアを出して、漏れのないように気を付けます。
 また、「そんなの無理だなあ」というような、批評をしてはいけません。それは後で行います。とりあえずたくさん書き出します。
 コツとしては、単純かつ具体的な言葉で表現する、ということです。長々と「勉強するには、参考書が必要で、それを読む時間はどのぐらいかかるだろうか」などと考え込まないで、「参考書を買うお金がいる」「参考書を読む時間がいる」というように、簡単に、具体的な行動を書くと良いでしょう。


3.2で書き出したことを整理する
 思い付いたことを整理して、目標実現に何が必要なのか、ハッキリさせます。
 ここでは、パソコンソフトを利用して、テレビゲーム感覚で整理してみます。

「IdeaFragment2」(作者: ねこみみ / 須藤 幸一 氏)
動作環境 (Windows 98 / Me / NT / 2000 / XP / 2003 / Vista)
http://www.forest.impress.co.jp/lib/offc/document/ideaprocsr/ideafragment.html

 他にも、アイデアを整理するソフトはたくさんあります。動作環境が合わない場合、使いづらい場合は、ご自分にあったソフトを探してみて下さい。
 もちろん、画用紙やペンを用意すれば、手作業でも可能です。とりあえず、例をご説明しますので、だいたいのやり方を理解して下さい。
 ソフトでは、“断片”、“表札”、“標識”などの用語が出てきますが、ここではやり方だけを取り上げますので、基本的には“カード”と表記しておきます。詳しくはソフトのヘルプファイルを参照して下さい。

 まず、一番上に大きく、目標を書きます。
 その下には、とりあえず、先ほどの議題「目標のために必要なこと」を、カードに書いて置きます。
 先ほど2で思い付いたことを、一つ一つカードに書きます。
 次に、カードの内容を見ながら、グループ分けを行います。同じような内容をひとかたまりにするのです。

 2で思い付いた、「試験を受ける費用」と「参考書の代金」は、同じグループにして良いでしょう。「勉強する時間」は明らかに別のグループだと思います。

 グループ分けしてみると、新たに思い付くことがあると思います。
 参考書のほかに最新の国語辞典も買わなきゃいけなかった。大きな図書館で調べ物をする必要があるかもしれない。試験に合格したら講習を受けるんだった…。
 思い付いたらカードを足していきましょう。
 そして、グループに共通するものが見えてきたら、目立つカードに書き込みます。今までのカードから選んでも良いでしょう。

 私の画面はこんな感じになりました。
 例)
目標達成のために必要なことを整理しています

 ここから、またいろいろ思い付いたら、カードを足して良いと思います。逆に、2枚のカードに同じことが書かれていると思ったら、1枚にまとめた方が良いかもしれません。
 この例では、図書館へ行く時間、試験を受けに行く時間、講習を受けに行く時間などを、新たに追加する必要がありそうです。


4.目標到達に関係する要素を書き出す。
例)
・お母さん
・新しい職場
・Mさん
・前の職場

 ここでは、家族、職場、交友関係等、周りの環境を選びました。


5.4の一つ一つの項目について、思い付いたことを書き出す。
例)
【お母さん】
何でも話せる、知り合いが多い、気が強い…
【新しい職場】
社長が事情を理解している、給料は普通、先輩が口うるさい…
【Mさん】
頼りがいがある、暴力団員である、会費の捻出を手伝わされる…
【前の職場】
給料が良い、歳の近い同僚が多い、意地悪をする同僚がいた…

 ここでも、2と同じように、バカバカしいアイデアでも、恥ずかしがらずに書き出すことが重要です。
 また、「お母さんは覚せい剤の使用に敏感になるから」、「Mさんは更生して出所してくるから…」などと、根拠のない憶測を入れてはいけません。今までのままで考えることが大事です。他人をあてにしないために行っていることなのですから。
 考えていると、いろいろ思い出して、辛くなってしまうかもしれません。そんな時は、とりあえず深呼吸して自分を落ち着かせて、別の項目を考えてみましょう。それでも無理だったら、今日はもうやめて、明日にでも再開すればいいと思います。
 しかし、いつかは向き合わなければなりません。少しずつ頑張りましょう。


6.5をカードにしてグループ分けする
例)
周りの環境をグループ分けしています
 一見しただけでハッキリ分かるようになりました。新たに思い付いたらカードを足してみましょう。同じカードが2枚あると思ったら1枚にまとめてもいいでしょう。


7.3でまとめたことに対して、有利なこと、不利なことを、6の中から付け加える。
例)
周りの環境のうち、必要な金額に有利、不利なことを整理しています
 ここでは、資格取得に必要な金額に対して、周囲の環境の有利な点、不利な点をまとめました。矢印で結ぶことによって、一見して関係が分かるようにしました。

例)
周りの環境のうち、必要な時間に有利、不利なことを、整理しています
 こちらは、資格取得に必要な時間に対して、周囲の環境の有利な点、不利な点をまとめました。こちらも矢印で結んで関係を分かりやすくしています。


8.全体を眺めながら検討する
 最終的な全体図はこのようになりました。
(もう少しグループ同士を離したほうが、矢印が長くなって、見やすいと思います。私は、ブログの幅におさまりきらないので、やむなく近付けました)
全体を見て検討します
 これで、たくさん思い付きましたし、整理できたと思います。図を見ながら、誰を頼ったほうが目標に近づけるのか、検討して下さい。

 ここで重要なのは、どうしても無理なことと、個人的に望ましくないことを、別に考えるということです。
 例えば、「必要な時間」の「不利になること」の中に、「Mさんが急に呼び出す」とありますが、これはどうしても無理なことです。つまり、時間を物理的に確保できないため、勉強できないのです。
 同じ場所に、「新しい職場の先輩が口うるさい」とありますが、これは個人的に望ましくないことです。「あんたねー、私よりも早く帰るってどういうこと?」などと嫌味を言われたとしても、事情を知っている社長に話を通しておけば、我慢すればすむことです。

 物理的に対処不可能なことは、我慢すればすむことよりも、優先して下さい。そういうカードに目印を付けると分かりやすいと思います。ちなみに、このソフトでは、背景や文字の色を変えることができます。上手に活用して下さい。
例)
重要なことを色分けすると分かりやすくなります
 よりハッキリしました。
 私の作成した例では、Mさんとは縁を切って、お母様を頼って、新しい職場で頑張る、という結論が導き出されました。
 当たり前ですが、これは私がそれらしく作成した、単なる例です。内容は事実と異なります。
 もっと、効率の良い、自分に合った方法があるかもしれません。いろいろ試してみて下さい。もし、専門書で勉強するつもりなら、考え方や精神論ではなく、具体的な方法が書かれている本を選んで下さい。

 重要なのは、このような方法を使って、自らの状況を冷静に分析して、少しでも目標に近づける選択を、自分で決めるということです。

 何でもかんでもフィーリングで決めてはいけません。人生には重大な選択を迫られる場面があります。そんな時、感情ではなくて、冷静な判断が必要なこともあります。
 もちろん、深く考えても無駄なことだってあります。勘がモノを言う場面もあります。そんな時はフィーリングを頼りに判断したほうが良いかもしれません。それは、時と場合によって違います。

 しかし、大きな失敗をして、人生の再チャレンジを考えるにあたっては、頭を冷やす必要があります。フィーリングに頼る場面ではありません。


 Jさんは、公判で泣いてばかりいて、Mさんとの関係をどうするのかハッキリ言いませんでした。これは、反省してはいるものの、自分のやったことについて、整理できていないのだろうと思います。これでは、再チャレンジのスタートラインに立つ準備が、不十分です。

 本来ならば、自分の犯した罪と向き合い、心の中で整理をつけなければなりません。しかし、そんな難しいこと、私にはどうしていいのか分かりません。これはご家族や保護観察官にお任せするしかないのかもしれません。

 私は、再チャレンジにあたって、具体的にどうしたらいいのか、考える方法を探ってみました。次の目標に向かって、自分や周囲を分析し、選択肢をはっきりさせれば、罪を犯した状況を見つめ直すきっかけになると思います。
 それに、目標へと頑張る手段を考えるわけですから、楽しんで行うことができます。
 Jさんや、同じ境遇の方に、「感情に振り回されてばかりではいけない」と伝わったら、それだけでも嬉しいです。

 それと、「頑張る頑張る」と気合いを入れるだけでは、うまくいくとは限りません。先に最善の手段を見つけてから、気合いを入れて下さい。それを楽に見つけられる方法がありますので上手に活用して下さい。そうすれば、気合いが空回りしたり、努力がムダになる確率を減らせます。
 目標に近づけるように、ちゃんと根拠と効果のある選択をして、無理をしなくてもすむように調整して下さい。その上で努力を重ねれば、目標到達が夢ではなくなるでしょう。

 さて、この機会に私も、自分の目標に向かって、どうしていったらいいのか考えてみることにします。
 で、私の目標って何だっけ…?
 左うちわで寝て暮らす? そのために必要なことは、快適な住居、家事をしてくれるお手伝いさん、費用を捻出する莫大な財産…。
 うーん、そんなのムチャです。身の丈にあった目標を選ぶのも大事なのかもしれませんね…。

◎今回分かったこと
・保護観察期間中は約束ごとを守ってマジメに暮らしましょう。
・保護観察官、保護司と、信頼関係を結びましょう。
・判決確定から3ヵ月以内の再犯に注意しましょう。
・判決確定から9ヵ月〜1年後の覚せい剤の再犯に注意しましょう。
・判決確定から1年3ヵ月〜1年6ヵ月後には、覚せい剤以外の犯罪にも注意しましょう。
・他人頼みでは、更生も、人間的な成長も、難しいかもしれません。
・刑務所で自立した生き方を見いだす女性受刑者がいます。
・再チャレンジは気合いだけではできません。
・目標実現のためにどうしたらいいのか、楽に考える方法があります。


参考文献:
「更生保護便覧'04」(法務省保護局 編集、更生保護法人 日本更生保護協会 発行)
「平成7年版 犯罪白書」(法務総合研究所)
「娘の積木くずし」(穂積由香里 著、株式会社 データハウス 発行)
「罪と罰」[第44巻3号](財団法人 日本刑事政策研究会 発行)
「IdeaFragment2」(作者: ねこみみ / 須藤 幸一 氏)
「ねこみみの世を忍ぶ仮のホームページ」 http://nekomimi.la.coocan.jp/
「窓の杜」 http://www.forest.impress.co.jp/
「共依存かもしれない …他人やモノで自分を満たそうとする人たち」
(ケイ・マリー・ポーターフィールド 著、水澤都加佐 監訳、大月書店 発行)
「更生保護」[平成十九年四月号]
(法務省保護局 編集、更生保護法人 日本更生保護協会 発行)
「豊田市更生保護記念誌 そえぎ四十年の歩み」(豊田市保護司会、豊田更生保護婦人会)

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この記事へのコメント
はじめまして
いつも楽しく拝見させて頂いております。
貴殿の記事がいつアップされるのかと毎日首を長くして待っております。私は普通のサラリーマンですが、貴殿のHPやその他の裁判傍聴に関するHPを見て裁判傍聴に興味を持ち、日々努力して(会社をサボって・・・)裁判傍聴にいっています。貴殿のHPは非常に分析力が高く参考になります。非常に恥ずかしいのですが、私も貴殿のHPを参考にしながら裁判傍聴日記をブログで公開することにしました。貴殿のHPのように人気ブログになるよう頑張ります。これからも詳細な分析による貴殿の裁判傍聴日記を楽しみにしています。
Posted by 裁傍検事 at 2007年07月30日 22:10
裁傍検事さん、はじめまして。

いつも私どものブログをご覧いただき誠にありがとうございます。なかなか更新できず、お待たせしてばかりで、申し訳ございません。

数日前ぐらいに、アクセス解析の「リンク元」がきっかけで、裁傍検事さんのブログを拝見いたしました。裁判を見ていろいろ勉強されているのですね。私のブログがリンクされていたので嬉しく思っておりました。

たくさんお褒めいただいて光栄です。
私は、分析というほどのことはしてなくて、ボンクラなので、泥棒さんの気持ちに共感できるだけです。あとは、他の方の研究や論説を、泥棒……、じゃなくて引用して、つぎはぎしている感じです。参考にしていただくのは本当に嬉しいですが、お役に立つのかどうか、あまり自信ないです…。
ただ、ありきたりな事件を詳しく調べたり、具体的な更生の方法に踏み込んだりするのは、他のメディアと競合しませんので、頑張ろうと思っております。
あと、この記事に関しては、大変難しい事件だったので、いつになく気合いを入れて書きました。

平日の昼間の傍聴は、サラリーマンにとって、大変でしょうね。私は交通費の捻出が大変です…。

では、お互い頑張って傍聴していきましょう。今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 絶坊主 at 2007年07月31日 21:53
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